感染症・健康

コロナ前の運動習慣、感染2年後の日常生活動作に関連 ブラジル研究

世界の記事一覧

感染前に定期的な運動をしていた人は、新型コロナウイルスに感染してから2年後に日常生活の動作で困る割合が低かったとする研究結果が、学術誌BMC Public Healthに発表された。ブラジルの研究チームが、感染から2年間にわたって同じ人々を追跡した調査によるものだ。

何が起きたのか

研究を主導したのはブラジルのペロタス連邦大学のチーム。2020年12月から2021年3月にかけて症状があり検査で陽性が確認された成人を対象に、感染前の運動習慣と、感染後の日常生活動作の困難さとの関係を調べた。運動習慣は「週150分以上の運動」を目安にし、それを満たしていた人を「身体的に活発」と分類した。

日常生活動作の困難さは、感染から6か月後と2年後の2回、買い物、食事の準備、掃除、小さな物を扱う作業、服薬管理といった行為に手助けが必要かどうかを尋ねて評価した。6か月後の調査には2,919人、2年後の調査には1,927人が参加した。困難を訴えた人の割合は、6か月時点では8.4%だったのに対し、2年後には31.6%まで増えていた。

年齢、性別、人種、所得、体格指数(BMI)の影響を統計的に調整したうえで分析したところ、感染前に運動の推奨基準を満たしていた人は、そうでない人に比べて、2年後に日常動作の困難を抱える割合が20%低いという結果になった。研究チームは、運動が肺の機能を高めたり、免疫の働きを整えたり、体内の炎症を抑えたりすることで、コロナ感染後の経過に良い影響を与えた可能性があると推測している。ただし運動習慣も日常動作の困難さも本人の自己申告に基づくものであり、観察研究であるこの調査だけで「運動が後遺症を防いだ」と証明することはできないと、研究チーム自身が注意を促している。論文は「感染前の身体活動は、コロナ感染後の長期的な機能の予後の改善と関連している可能性がある」とし、「身体活動を促進することを公衆衛生上の戦略に組み込むことが、機能回復を支え、コロナの長引く影響を減らすうえで重要な取り組みになりうる」と結論づけている。

背景

新型コロナウイルスに感染した後、疲労感や筋力の低下、以前はできていた日常の作業がこなせなくなるといった症状が長く続くケースは「コロナ後遺症」や「ロングCOVID」と呼ばれ、世界各地で報告が続いている。ただしその原因やなりやすさを左右する要因については、まだ研究段階の部分が多い。

今回の調査で注目されるのは、感染から時間が経つほど日常動作の困難を訴える人の割合が増えていた点だ。6か月後の8.4%から2年後の31.6%へと大きく上昇しており、後遺症的な症状が短期間で消えるものではなく、加齢や他の健康問題の影響も重なりながら長期にわたって残りうることを示しているとみられる。そうした中で、感染前からの生活習慣、とりわけ運動習慣の有無が、その後の生活の質に関わっている可能性が示されたことは、後遺症対策を「感染後にどう治療するか」だけでなく「感染前にどう備えるか」という視点からも考える材料になる。

日本にとっての意味

日本でもコロナ後遺症への不安を抱える人は少なくなく、外来を設けている医療機関もある。今回の研究は海外の一つの調査にすぎず、日本人を対象にした結果ではない点には注意が必要だが、運動習慣が感染後の長期的な生活機能と関連しているという知見は、後遺症に不安を持つ読者や、日常的に運動習慣を維持しにくい高齢者にとって、生活習慣を見直す一つの参考材料になりうる。今回の研究が目安とした「週150分以上の運動」を満たすような日常的な身体活動が、感染症にかかった後の回復力にも関わる可能性があるという見方につながる。ただし研究チーム自身が強調する通り、これは因果関係を証明したものではなく、運動をすれば後遺症を防げると単純に読み替えるべきではない。今後、日本を含む他の集団でも同様の傾向が確認されるかどうかが、この知見の信頼性を測る鍵になる。