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米艦不参加のNATO対潜演習、欧州とカナダが前面に

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NATOがアイスランド沖で行った年次の対潜水艦演習に、数十年ぶりに米国の艦船や航空機が参加しなかったことが分かった。米政治専門メディアのポリティコが現地時間9月5日に報じた。ドイツの哨戒機やカナダの艦艇、ベルギーの戦闘機が参加し、ロシアの潜水艦を探知・追尾する訓練を行った。北大西洋での軍事的な存在感を米国が弱めるなか、欧州の同盟国とカナダが対応を強めている構図が浮かんでいる。

何が起きたのか

演習は「ノーザンバイキング(Northern Viking)」と呼ばれ、フランス海軍のニコラ・モリトール少将が指揮を執った。ドイツの哨戒機、カナダの艦艇、ベルギーの戦闘機がアイスランド周辺で活動し、潜水艦の探知・追尾能力を確認した。

ポリティコによれば、この種の演習に米国の艦船や航空機が加わらなかったのは数十年ぶりだという。アイスランドの国防担当責任者ヨナス・アランソン氏は、欧州とカナダが前に出ている姿がまさにここアイスランドで見えていると述べたとされる。

ただし米国が完全に手を引いたわけではない。米軍人員はアイスランドのケフラビク空港での新たな軍事施設の建設を支援し、演習の計画づくりにも関わっているという。米艦・米機が加わらなかったことは、例年と比べて目立った変化だとポリティコは伝えている。

背景

アイスランドは、グリーンランドとアイスランド、英国を結ぶ海域であるGIUKギャップ(GIUK Gap、大西洋の北の出入り口にあたる海の関門)の近くに位置する。ロシア北西部のコラ半島にある海軍基地から潜水艦が大西洋に出るには、この海域を通ることになるとされる。

NATOのある高官は「NATOとロシアにとって、ここは本当の意味での境界線だ」と述べ、ロシアがこの関門を制して潜水艦を大西洋側に出せれば、大西洋を自由に動き回り、両岸の基地を脅かしうると指摘したという。冷戦期からこの海域は対潜水艦戦の要衝とされてきた経緯があり、ロシアの潜水艦の動きへの警戒は今に始まったことではない。

ただ近年は、潜水艦そのものだけでなく、海底に敷かれた通信ケーブルやパイプラインといったインフラへの脅威も懸念材料に加わっているという指摘がある。ドイツ海軍のペーター・フロール氏は、こうした海底ケーブルの重要性について「ドイツで注文するアマゾンの品は、すべてこのケーブルを通る」と述べ、常時の監視が必要だと強調した。

米国が北大西洋で前面に立つ役割を控えめにする背景には、同盟内での負担分担、つまりどの国がどこまで軍事的な役割を担うかという議論があるとみられるが、その具体的な方針は今回の報道だけでは明らかではない。

日本にとっての意味

米国が同盟国の防衛活動で前面に立つ役割を後退させ、欧州側がそれを引き継ごうとしている今回の構図は、日米同盟のあり方を考えるうえでも参考になる。日本でも、米国が今後どこまで前面に立つ役割を担い、どこから同盟国に肩代わりを求めるのかという負担分担の議論が続いており、北大西洋での動きはその一つの先行事例といえる。

また、海底ケーブルをめぐる懸念も他人事ではない。日本の国際通信の大部分は海底ケーブルに依存しており、その陸揚げ局や敷設ルートの防護は、経済安全保障の観点から近年重視されるようになっている論点である。日本周辺の海域でもロシアや周辺国の潜水艦の動きが注目される場面があり、海上自衛隊が担う対潜哨戒の役割も、今回のNATOの議論と同じ問題意識、つまり平時からの警戒態勢をどう維持するかという課題を共有している。