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米農務省、国有林の道路建設禁止規則の撤廃案 飲料水2500万人分に影響の指摘

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米農務省が現地時間の8月18日、国有林の奥地を保護してきたロードレス・ルール(Roadless Rule、新たな道路建設と商業伐採を禁じる規則)を全面撤廃する案を提出した。対象地域は全米で約1800万ヘクタール(4500万エーカー)に及び、研究者によれば約2500万人の飲料水がこの地域に源を発する流域から供給されているという。撤廃されれば水源の水質悪化を招く恐れがあると専門家は指摘している。

何が起きたのか

米農務省は現地時間8月18日に規則案を提出し、案は現地の8月20日付で連邦官報(Federal Register、米政府の官報)に掲載された。2001年に森林局(Forest Service)が定めたこの規則は、道路がほとんど整備されていない国有林の奥地で新たな道路建設と商業伐採を禁じてきた。撤廃案は現地の9月21日深夜まで意見を募るパブリックコメント(public comment)の期間に入っている。

2026年7月の学術誌PLOS Waterの研究によると、この対象地域を水源とする流域から飲料水を得る米国民は約2500万人にのぼり、コロラド州、ニューメキシコ州、モンタナ州では人口の3分の1以上がこうした水に依存しているとされる。南カリフォルニアのアンジェルス国有林だけで400万を超える顧客に水を供給しているという。

研究者らは、伐採や道路建設が土砂の流出を招き、水道事業者の浄水コストを押し上げると警告する。2024年の学術誌Forestsの研究では、森林内の道路が河川の土砂負荷の最大9割を占めるとされた。研究者らはこうした森林を「重要な飲料水インフラ」と呼び始めているという。

対象地域は米本土の面積の2%にすぎないが、絶滅の恐れがある陸生生物種の57%の生息地とされる。農務省自身も文書で、意見を聴取した先住民族の大半が撤廃に反対していることを認めている。レクリエーション分野では、オフロード車やスノーモービル関連の団体が撤廃を支持する一方、狩猟や釣りの場が失われるとして反対する団体もある。

背景

米国では規則案を公示した後、一定期間パブリックコメントを募り、意見を踏まえて規則を確定する手続きがある。現地の9月21日はその締め切りにあたる。

農務省は今回の撤廃について、規制の負担を減らし森林管理の判断を地域に委ねる狙いがあるとし、国内の木材資源は十分にあるのに連邦政府の政策が活用を妨げてきたとするトランプ大統領の大統領令にも結び付けている。ロリンズ農務長官は声明で「あまりに長い間、時代遅れの規制が、森林の健全性を高め地域社会への山火事リスクを減らすまさにその施業から、数千万エーカーの森林を締め出してきた」と述べている。

しかし、この山火事対策という説明には異論がある。研究では米国の山火事の大半は人為的な出火が原因とされ、出火の密度は道路のない地域に比べ道路周辺で約4倍高いとされる。道路の新設がかえって出火のきっかけを増やしかねないという指摘だ。

森林局は環境を所管する省庁ではなく農務省の傘下にあり、農務長官が説明の前面に立つのはそのためでもある。研究者のデービッド・ミルドレクスラー氏によれば、森林局は既存の道路だけでも維持補修の積み残しが108億ドル規模に達しているとされる。バーモント・ロー・アンド・グラデュエート・スクールの名誉教授パトリック・パレンテオ氏は「政権が規則の撤廃を強行すれば訴訟は避けられず、政権側が容易に勝てるものではない」と述べている。

日本にとっての意味

日本でも山間部の水源林が飲料水や農業用水の源となっており、森林の状態が下流の水質や浄水コストに影響するという構造は共通している。米国の事例は、上流の森林保護を緩めた場合の負担が、最終的には水道の利用者や事業者に及びうることを具体的に示している。

米国の国有林は木材資源としての側面も持ち、規制緩和は伐採量の増加につながりうる。日本は木材の多くを輸入に頼っており、北米材の供給動向は住宅建材の価格を通じて間接的に波及しうるが、今回の措置が輸出入にどう影響するかは現時点では見通せない。