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パルテノン彫刻の貸出、フランクフルト展で英博物館作品と並ぶ懸念でギリシャが拒否

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ドイツ・フランクフルトのリービークハウス彫刻美術館が計画する展覧会に向け、ギリシャがアクロポリス博物館所蔵のパルテノン神殿の彫刻断片9点の貸出を拒否したことが分かった。ギリシャ側の報道によると、エルギン卿が19世紀にアクロポリスから持ち出し、現在は英博物館(ブリティッシュ・ミュージアム)が所蔵する断片と並べて展示されることが理由とみられる。展覧会自体は現地の11月18日に予定通り開幕し、英博物館は別途2点の貸出に応じている。

何が起きたのか

リービークハウスは、パルテノン神殿正面の三角形の壁面(ペディメント、pediment)のうち、東側のペディメントを世界で初めて全体像として復元する展覧会「Athena, the Stage is Yours: the Parthenon Puzzle」を企画した。このためアクロポリス博物館に彫刻断片9点の貸出を申請したが、ギリシャの文化財保護に関する諮問機関である中央考古評議会(Central Archaeological Council)がこれを拒否したと、ギリシャの複数メディアが伝えている。ギリシャ文化省の報道担当はメールでの確認要請に応じず、電話にも応答がなかった。

英博物館の広報担当者は取材に対し「貸出は行う」と述べ、自館所蔵の2点についてはフランクフルトへの貸出を予定通り進める考えを示した。うち大きい方は、歩く人物像の両足部分と木の切り株の断片で、高さ約50センチ、長さ1.4メートル。英博物館の学芸員はこの人物像を西側ペディメントのものと見てきたが、展覧会を監修するヴィンツェンツ・ブリンクマンは東側ペディメントの一部だったとの見解を示している。

もう1点は垂れた布のひだを表した断片で、しばらく展示されていなかったという。大きい方の足の断片は英博物館の主要なパルテノン展示室ではなく、隣接する小部屋で扱われてきた小規模な断片で、輸送のため最近取り外されたばかりだった。

リービークハウスの広報エリザベート・パレンティンはメールで「ギリシャからの貸出が取り消されても、展覧会の構想や学術的な意義が損なわれることはない」とコメントした。展覧会は同館で長年続けてきた独自の研究成果を基盤にしているという。

背景

パルテノン神殿の彫刻群を巡っては、ギリシャが数十年にわたり英博物館に返還を求め続けてきた。彫刻は1817年から英博物館が保管しており、同館は1963年制定の大英博物館法(British Museum Act)により返還が妨げられていると説明している。2002年には英国の国会議員7人が同法の改正を目指す議員提出法案を出したが、廃案となった。今回の拒否は、こうした所有権を巡る対立が第三国での展覧会の貸出審査にまで及んだ事例といえる。

展覧会が焦点を当てる東側ペディメントは、女神アテナの誕生を描いたとされ、高さ3.5メートルに及ぶ中央のアテナとゼウスの像を含む39体の群像で構成されていたとされる。しかし5世紀から1670年の間のいずれかの時点で破壊され、その原因や経緯は分かっていない。現存するのは全体の2割程度とされ、残りの断片は世界各地の美術館に散在している。

ブリンクマンによると、過去200年で数多くの復元案が示されてきたが、いずれも欠落が残っていた。今回の研究では、20世紀初頭に英博物館の学芸員アーサー・ハミルトン・スミスが石膏で型取りした複製をもとに部分的な復元を行っていたことを土台とし、3Dスキャンや3Dプリンターで断片を再現。さらに、これまで見過ごされてきたローマ時代の石棺のふたに彫られたレリーフ9点(主にバチカン美術館などが所蔵)を手がかりに、コンピューター技術で照合を進めた結果、初めて全体像の復元にこぎつけたという。

日本にとっての意味

今回の件が示すのは、所有権を認めない相手に対しては、返還そのものだけでなく「貸出」自体を拒む選択肢があるという点だ。第三国での展覧会に自国の文化財を出品し、持ち出した側の博物館の所蔵品と並べて展示することは、結果としてその所有を黙認したかのような印象を与えかねない。ギリシャの判断は、貸出という一見穏当な国際協力の場面にも、所有権を巡る対立が影を落とすことを示している。

日本の博物館・美術館も、朝鮮半島や中国など近隣地域に由来する文物を所蔵しており、由来を巡る貸出や返還の要請が今後生じる可能性は構造的に排除できない。その際、貸出に応じること自体が所有権の承認と受け取られかねないという今回のギリシャの論理は、日本側が対応を検討するうえでも参考になる視点だろう。

また、今回のケースは国際巡回展の企画そのものが抱える脆さも浮き彫りにする。何年もかけた学術的な準備が整っていても、貸し手側の政治的立場ひとつで展覧会の目玉となる作品が土壇場で失われうる。海外の展覧会情報を紹介する日本のメディアや来場者にとっても、展示の背後にこうした外交的な駆け引きが存在することは、知っておく価値がある。