気候・災害

ボルネオでオランウータン7頭を救出 エルニーニョで山火事拡大

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インドネシア・ボルネオ島で、強まるエルニーニョ現象の影響とみられる森林火災が相次いでいる。動物保護団体などは現地の8月に7頭のオランウータンを救出したが、うち1頭は煙を吸い込んだことが原因とみられる症状で死んだ。

何が起きたのか

西カリマンタン州ケタパン県で活動するインドネシアの動物保護団体YIARIによると、現地の8月中に7頭のボルネオオランウータンが救出された。同団体の広報、ヘリベルトゥス・スチアディ氏が明らかにした。

現地の8月6日には、村の果樹園に迷い込んだオスのワクを保護した。現地の8月21日には、火災で生息地を分断された母子3頭(ママ・ユニ、プラ、ユニ)をケタパン県の別の集落で救出した。

現地の8月27日には、アブラヤシ農園(パーム油の原料となる作物の農園)にいた母子2頭(ママ・ヤユクとヤユク)を保護し、食料が豊富なグヌンパルン国立公園に放した。現地の8月30日には、同じくアブラヤシ農園近くで衰弱したオスの成獣サンプルナが見つかり、YIARIのスンガイアワンキリ保護施設に搬送されたが、数時間後に死んだ。

治療にあたった同団体の獣医コマラ氏は、「煙への曝露が激しく、それが何日も続くと、オランウータンは呼吸困難や酸素不足(低酸素症)を起こすことがある」と説明した。死因はこの煙害による症状とみられている。YIARIの現場責任者アルギトエ・ランティン氏は、「森林火災や土地火災が野生動物に与える影響は、必ずしもやけどだけではない」と述べ、衰弱した個体を見つけた場合はむやみに近づかず、通報してほしいと呼びかけた。

西カリマンタン州の自然保護当局(BKSDA)の責任者ムルラン・ダメリア・パネ氏は、住民や電話窓口からの通報を受けるたびに、野生動物の救出に対応していると述べた。

背景

ボルネオオランウータン(Pongo pygmaeus)は、世界に3種しかいないオランウータンのうちの1種である。スマトラオランウータン、タパヌリオランウータンとともに、いずれもインドネシアに生息し、絶滅の危険が最も高い区分に分類されている。国際自然保護連合(IUCN)が2016年に実施した最新の調査では、野生のボルネオオランウータンはおよそ10万頭とされていた。研究者らは、1950年から2025年までの3世代の間に、生息地の破壊や直接的な殺害によって個体数が約86%減ったとの推計を示している。

繁殖の遅さも回復を難しくしている。ボルネオオランウータンのメスは、通常7〜8年に1頭しか出産しないため、一度失われた個体数はなかなか戻らない。IUCNは、泥炭地の森林で繰り返される火災が、10年に一度ほどの頻度で個体数を急激に押し下げていると指摘している。

今回の火災悪化の背景にあるのがエルニーニョ現象だ。これは赤道付近の太平洋の海面水温が上昇し、世界各地の気象を乱す現象で、インドネシアでは高温・乾燥と山火事のリスク拡大につながりやすいとされる。ケタパン県のような低地の泥炭地は、枯れた植物が完全に分解されずに積み重なった土壌でできており、乾燥すると地中でくすぶるように燃え広がりやすい。森林が焼けて生息地を追われたオランウータンが、アブラヤシ農園や住民の果樹園に迷い込む例が相次いでいる。

日本にとっての意味

エルニーニョは日本の天候にも影響するとされ、季節予報で注視される現象でもある。日本では一般に冷夏や暖冬として現れやすいとされ、東南アジアの乾燥・高温とは異なる形で、同じ太平洋の現象が日本の気候にも関わってくる可能性がある。

インドネシアの泥炭地火災はかつて、煙害として周辺国の大気質を悪化させ、渡航や、現地に駐在する日本人の生活にも影響したとされる。乾季が現地の10月ごろまで続くとみられる中、火災の規模次第では同様の越境的な影響が再び懸念される。

インドネシアは世界有数のパーム油生産国であり、パーム油は食品や洗剤、化粧品の原料として日本にも入っているとされる。今回の救出現場となったアブラヤシ農園は、まさにそのパーム油の生産地であり、森林の消失や火災による生息地の喪失は、日本での消費とも結びついているという指摘がある。