米CDC、インフルエンザとコロナの部局を統合 FDAはAI担当幹部新設
米疾病対策センター(CDC)は、季節性インフルエンザを担当する部局と新型コロナウイルスなど呼吸器疾患を担当する部局を統合し、新たに「インフルエンザ・呼吸器ウイルス部(Influenza and Respiratory Viruses Division)」を設置する。同じ時期に米食品医薬品局(FDA)も、AI(人工知能)分野を統括する新設ポストを含む幹部人事を発表した。二つの機関で組織の再編が同時に進んでいる。
何が起きたのか
CDCは、季節性インフルエンザを扱う「インフルエンザ部」と、新型コロナウイルスなど他の呼吸器疾患を扱う「コロナウイルス・その他呼吸器疾患部」を統合する。新設のインフルエンザ・呼吸器ウイルス部は、季節性の流行や新たなパンデミックを引き起こしうる呼吸器ウイルス性疾患について、感染状況の監視、州や地方の保健当局への技術支援、検査・診断・ワクチン・治療法の改善を担う。
CDCの広報担当者ベルシー・ゴンザレス氏は、専門誌CIDRAPの取材に対し、今回の再編は「業務効率とパンデミックへの備え、検査体制の能力を強化し、CDC内部や連邦機関、自治体、外部団体との調整を効率化し、専門性と資源を最適化する」ものだと説明した。ゴンザレス氏はまた、「今回の再編に伴う人員削減の計画はない」と述べている。
この統合はバイデン政権時代から計画されていたものだという。2025年8月までCDCのデータ部門を率いていたセントルイス・ワシントン大学のジェニファー・レイデン氏は、新型コロナが季節性の流行パターンに近づいてきた今、インフルエンザと統合するのは理にかなっていると評価する。同氏は、感染状況の監視の仕組みが縦割りになっており、非効率だと指摘し、複数のウイルスを横断して監視できれば連携が進むとの見方を示した。一方、CDCで予防接種・呼吸器疾患を担当する部門の元責任者デメトレ・ダスカラキス氏は、米メディアStat Newsに対し、呼吸器疾患が流行する季節を目前に控えたこの時期の再編は望ましくないとの考えを示したという。
同時期、FDAは幹部4人の人事を発表した。目を引くのは、新設された「技術・AI担当副長官」にジャレッド・シーハファー氏を起用したことだ。FDAは、この新設ポストについて、信頼できるAI技術の革新を後押しし、連邦政府の技術基盤を近代化し、新技術に対応した規制の枠組みを整えるという、トランプ政権の方針を反映したものだと説明している。
ワクチンや血液製剤の審査を担う生物製剤評価研究センター(CBER)のトップには、カリム・ミハイル氏が就いた。FDAによれば、同氏は希少疾患向けを含む医薬品開発を加速するための規制枠組みの見直しと、透明性と科学的精度を重視したワクチン安全性監視の強化に取り組むという。前任のヴィネイ・プラサド氏は、在任中に論争を招いたと伝えられている。このほか、処方薬などの審査を担う医薬品評価研究センター(CDER)所長にマイケル・デイビス氏、タバコ製品センター(CTP)所長にブレット・コプロー氏がそれぞれ就任した。
背景
トランプ政権下でCDCやFDAの幹部が入れ替わり、政策の優先順位が見直されてきたとみられる。今回のCDC部局統合自体は前政権から計画されていたものだが、実施が現政権の下になったことで、再編の意味づけをめぐって受け止めが分かれている。
新型コロナは発生から数年が経ち、季節性インフルエンザと同じように流行の波を繰り返す病気になりつつあるとみられている。両者を別々の部局で扱う体制については、感染症の監視や情報発信が縦割りになりやすいという指摘が以前からあった。今回の統合はこうした構造上の課題に対応する狙いがあるとみられる。
FDAのAI担当副長官の新設は、医療機器や創薬の分野でAIの活用が急速に広がっていることを踏まえた動きとみられる。AIを使った診断支援機器や創薬支援ツールの審査をどう進めるかは各国の規制当局が共通して直面する課題であり、米国がどのような枠組みを示すかは他国の規制のあり方にも影響しうる。
日本にとっての意味
CDCのインフルエンザや新型コロナの監視データは、世界保健機関(WHO)を通じた各国の対応に間接的に関わっているとされる。日本で使われるインフルエンザワクチンの流行株の選定などは、こうした国際的な監視情報の積み重ねを踏まえて議論されるとみられる。米国側の監視体制の再編は、直接目に見えにくい形で関係してくる可能性がある。
FDAの新体制で医薬品評価研究センター所長に就いたデイビス氏は、国内外の医薬品供給網の強化を課題の一つに掲げている。日本の製薬会社が米国向けに医薬品を輸出したり、逆に米国発の医薬品を日本で承認申請したりする際には、FDAの審査体制や優先課題の変化が実務に影響する可能性がある。
また、FDAが医療分野のAI活用を担当する幹部ポストを新設したことからは、医療機器や創薬支援にAIを組み込む動きが世界的な規制上の論点になりつつあることがうかがえる。日本でも医療機器や医薬品の審査にAIをどう位置づけるかは今後の課題であり、米国の規制当局がどのような判断を示すかは、参考事例として注目される可能性がある。