感染症・健康

接種する意思があってもコロナワクチンを打たない人が4割弱、米国の調査

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米国の成人3390人を対象にした調査で、ワクチンを打つ意思があると答えた人の一部が実際には接種していなかったことが分かった。コロナワクチンでは意思を示した人の39%、インフルエンザワクチンでは16%が最終的に未接種だった。研究チームは、接種率の低さを「ためらい」だけで説明できないと指摘している。

何が起きたのか

この調査は、ニューヨーク市の研究チームが学術誌Vaccineに発表したものだ。2025年8月に米国の成人3390人に、それまでの接種歴と2025〜26年シーズン(秋から翌春にかけて流行するインフルエンザやコロナへの対策期間を指す)の接種予定を聞き、2026年3月に実際の接種状況を確認した。

調査では、前シーズンに接種していた人、または今シーズンの接種を予定していた人を「接種意思あり」と分類した。この基準で見ると、インフルエンザワクチンに意思を示した人は73%、コロナワクチンは68%に達した。

しかし意思と行動には差があった。コロナワクチンで「たぶん打つ」と答えた層では66%が、「確実に打つ」と答えた層でも24%が未接種のままだった。インフルエンザワクチンのほうが意思と行動の差は小さく、未接種は16%にとどまった。同じ人、同じシーズンでの結果であり、コロナワクチンのほうが意思が行動に結びつきにくいことがうかがえる。

背景

接種率をめぐる議論は、これまで「ワクチンへの不信」や「ためらい」を軸に語られることが多かった。打つつもりだと答えた人は、いずれ打つはずだと見なされ、その回答自体が実際の接種の代わりに扱われてきた。今回の研究は、この前提そのものに疑問を投げかけている。「意思があることは、その後の実際の接種を必ずしも意味しない」と研究チームは述べている。

調査では、取りこぼされやすい人の特徴もいくつか見えている。最も強い予測因子は、前シーズンに接種していなかったことだった。前シーズン未接種の人は、意思があってもインフルエンザワクチンを打たない可能性が約4倍、コロナワクチンでは約3倍高かった。毎年の接種は習慣として続くかどうかで決まる面があるとみられ、途切れると再開しにくいという見方が成り立つ。

食料や住居の不安を抱えている人、医療へのアクセスに障壁がある人も、未接種に終わりやすかった。安全性に自信がない人は、インフルエンザワクチンで約3倍、コロナワクチンで2倍以上、未接種になりやすかった。

本人が語る理由は、意思の有無で大きく異なっていた。接種意思があった人が挙げた最も多い理由は、インフルエンザで33%、コロナで24.2%が「都合の良い時間や場所、予約が見つからなかった」というものだった。一方、意思がなかった人が挙げた最多の理由は副反応への不安で、インフルエンザで29.8%、コロナでは40.9%に達した。コロナワクチンでは、意思があった人の約17%が「医師から接種を勧められなかった」ことを理由に挙げている。

日本にとっての意味

この研究が示しているのは、接種率を上げる施策の的の外し方だ。安全性への不安を解消する広報や説明は、ためらいを抱く層には効くかもしれないが、すでに打つ意思がある人には響かない。この層が未接種にとどまる理由は、予約の手間や接種会場へ行きにくいこと、そして医療者から一声かけられなかったことだった。日本でも接種率向上策が安全性の説明に重点を置きがちだとすれば、意思のある層の取りこぼしは見過ごされやすい。

前シーズン未接種が最も強い予測因子だったという結果も参考になる。一度接種の習慣が途切れると再開しにくいという傾向は、コロナ禍の特別な体制での接種が一区切りとなり、その後の接種機会や案内の頻度が減った層に当てはまりうる。断定はできないが、日本でも同様の「習慣の途切れ」が起きている層がいないか、見ておく価値はあるだろう。

食料や住居の不安、医療へのアクセスの難しさが未接種と結びついていた点も見逃せない。経済的な不安定さが接種行動に影響するという構図は、費用負担の有無や職場・地域での接種機会の多寡によって、日本でも形を変えて現れる可能性がある。意思調査の数字だけを接種率の予測に使うことの限界を示す研究として、政策担当者にとっても示唆がある。