気候・災害

ブラジル内陸の水不足都市に1GWのAIデータセンター計画が浮上

ブラジル の記事一覧 ・ 南北アメリカ

ブラジル内陸の小都市パラカトゥで、出力1ギガワットという巨大なAIデータセンターの建設計画が進んでいることが分かった。この地域はもともと地下水の需給が逼迫しており、地元の議会議長や住民は、この計画の存在を報道機関の取材で初めて知ったという。ブラジル政府はAI開発の基盤となる資源国として自国を売り込んでおり、同様の計画は国内各地で進んでいる。

何が起きたのか

計画を進めているのは、米資産運用大手ブラックロックの一部門が保有するアトラス・リニューアブル・エナジー(Atlas Renewable Energy)という企業だ。同社はパラカトゥ市内に既に太陽光発電施設を持っており、今回はブラジルのエネルギー省に対し、送電網への接続許可を求める資料を提出した。計画は3つのモジュールに分かれ、2027年12月に一部が稼働を始め、2030年までに完成する予定とされている。

出力1ギガワットという規模は、現在ブラジル国内で稼働しているデータセンター全体の消費電力(合計で約800メガワットとされる)を上回る。世界最大級のAI基盤網の一つとされる米国のスターゲート(Stargate)計画の個別プロジェクトに匹敵する規模とも報じられている。

地元の議会議長マノエル・アルベス氏がこの計画を知ったのも、報道機関の取材がきっかけだった。2026年5月のことで、工事が2カ月後に始まると聞いたばかりだとして、「あなたたちも知らなかったのか」と市長室に問い返した。市長室も計画を把握しておらず、レストラン経営者や教会の管理人、広場の市民に至るまで、誰もこの計画を知らなかったという。

アトラス社は取材に対し、計画はまだごく予備的な検討段階にあり、技術的な決定は何も行われていないと回答している。パラカトゥは人口約10万人、首都ブラジリアから車で3時間の中規模都市だ。同社は水資源が豊富であることを立地理由の一つに挙げているという。だが元市長のアルミール・パラカ氏は、この地域では長年水利をめぐる対立が続いていると指摘する。水の割り当てが泉の湧出量を上回っている実情を挙げ、「水が豊富だという説明には異論がある」と述べている。

Mongabayとインターセプト・ブラジルの分析によれば、ブラジル国内では少なくとも37の自治体で68件のデータセンター計画が進行中だという。いずれも送電網への接続を申請済みで、一部は顧客探しの段階に入り、認可に必要な書類を提出した計画もあるとされる。ブラジルにはデータセンターを対象とした国レベルの環境規制が存在せず、住民側が計画の詳細を議論する時間もないまま、認可手続きが進んでしまう構図が指摘されている。

背景

パラカトゥはブラジル特有の広大な草原地帯セラード(Cerrado、ブラジル中央部に広がる乾季と雨季のある独特の生態系)の中心部に位置する。この地域は雨季に降った雨をいったん地中に蓄え、乾季にかけて泉や河川、地下水として少しずつ放出する仕組みを持つため、しばしば「ブラジルの水がめ」と呼ばれる。市内を流れるパラカトゥ川は約300キロの航行可能な流路を持ち、ブラジルを代表する大河サンフランシスコ川の主要な支流となっている。

AIの学習や推論を担うデータセンターは、大量の電力に加え、サーバーの冷却のために多くの水を消費するため、世界各地で注目を集めている。ブラジル政府はこうした需要に応える資源国として自国をアピールしており、ルーラ大統領は2026年5月、トランプ米大統領との会談を控えた場で、他国にデータセンター建設の機会を提供できる立場にあると述べたと伝えられている。

今回の計画で目立つのは、情報の非対称性だ。アトラス社は連邦政府のエネルギー省に対して送電網接続の許可を申請済みだったが、地元の議会議長はその存在すら知らなかった。全国規模の送電網接続や環境認可の手続きが先に動き、地域住民が影響を知るのはその後になるという順序が、今回明らかになったとみられる。

日本にとっての意味

日本国内でも、AI需要の高まりを背景にデータセンターの新設が各地で報じられている。パラカトゥの事例が示すのは、データセンター誘致でまず交渉が進むのは送電網への接続容量や電力供給であり、それが決まった後になって、冷却用の水や地下水の割り当てといった地元の資源負担が明らかになりやすいという構図だ。冷却方式が水を大量に使う水冷か、電力消費は大きいが水を使わない空冷かによって、地域への影響は大きく変わる。

ブラジルにはデータセンター特有の環境規制がなく、認可手続きが先行してしまう点が今回の混乱の一因になったとみられるが、日本でも新設計画が地域の環境影響評価の対象になるかどうか、どの段階で住民説明が行われるかは案件ごとに異なる。誘致自治体にとっては税収や雇用という利点がある一方、電力と水という生活基盤の負担が地元に及ぶ点は共通している。近隣でデータセンター計画が報じられた際に注目すべきは、出力(メガワット単位の規模)と冷却方式という2点だ。