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ブラジル最高裁を揺るがす司法スキャンダル、大統領選を左右

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ブラジルで10月に予定される大統領選を前に、世論調査会社アトラスインテル(AtlasIntel)とブルームバーグが実施した調査で、ルイス・イナシオ・ルラ・ダシルバ大統領と、ジャイル・ボルソナロ元大統領の長男であるフラビオ・ボルソナロ上院議員の支持が事実上並んだ。決選投票を想定した設問では、フラビオ氏46.4%、ルラ氏46.2%とほぼ横一線になった。この変化は、連邦最高裁判所(STF、憲法解釈や重大事件を扱う)内部の対立が表面化した時期と重なっている。

何が起きたのか

現地時間の9月10日に公表された今回の調査は、8月下旬の前回調査からの急激な変化を示した。前回はルラ氏47.1%、フラビオ氏42.6%とルラ氏が4.5ポイントの差をつけていたが、その差はわずか2週間ほどで消えた。ただし、これはあくまで決選投票を想定したシミュレーションの数字であり、実際の選挙結果を予測するものではない。

この支持の逆転は、最高裁判事同士の異例の対立と時期が重なっている。ジャイル・ボルソナロ元大統領が任命したアンドレ・メンドンサ判事が、連邦警察の捜査資料の秘密指定を解除した。この資料には、別の判事アレシャンドレ・デモラエス氏と、経営破綻した銀行バンコ・マスターの元オーナー、ダニエル・ボルカロ氏との間の私的なやり取りが含まれていたとされる。デモラエス氏はミシェル・テメル元大統領が任命した判事である。バンコ・マスターの破綻は、大規模な金融詐欺疑惑の捜査の中心に位置づけられている。

流出したとされるやり取りには、デモラエス氏とボルカロ氏の親密な関係や、これまで明らかにされていなかった接触をうかがわせる内容が含まれるという。ルラ大統領はこの対立から距離を置く姿勢を取り、バンコ・マスターを巡る捜査の全面公開を求め、「誰であろうと、誰が傷つこうと」責任を問われるべきだと述べた。もっとも、ルラ氏自身の支持率も44%まで落ち込んでおり、これはアトラスインテルが2024年初めに調査を始めて以来の最低水準だという。この44%という数字は大統領としての支持率であり、先述の決選投票の得票見込みとは別の指標である点に注意したい。

一方のフラビオ氏も、この金融スキャンダルと無縁ではない。ボルカロ氏の逮捕前に、父ジャイル氏の伝記的なドキュメンタリー制作費用としてボルカロ氏に資金提供を求めていたことが明らかになり、5月には得票見込みが7ポイント近く下落した経緯がある。

背景

デモラエス判事は、ジャイル・ボルソナロ氏にとって最大の政敵とみなされてきた人物である。SNS上の偽情報の取り締まりを主導したほか、2022年の大統領選で敗北した後にクーデター未遂を企てたとしてボルソナロ氏を有罪とした一連の司法手続きを取り仕切った。

今回、そのデモラエス氏に関する資料の秘密指定を解除したのが、ボルソナロ氏が任命したメンドンサ判事だったという構図は象徴的である。テメル元大統領が任命したデモラエス氏と、ボルソナロ元大統領が任命したメンドンサ判事という組み合わせが、そのまま司法内部の対立軸として表れた形だ。

野党側はこの内輪もめを、司法の行き過ぎ、つまり最高裁が政治的に偏った判断をしているのではないかという批判に結びつけ、選挙戦の材料として利用しているとみられる。ジャイル・ボルソナロ氏本人はクーデター未遂事件で有罪判決を受けた経緯があり、今回の選挙戦では父ではなく長男のフラビオ氏が候補として前面に出ている。

日本にとっての意味

ブラジルは日本にとって、鉄鉱石や鶏肉、大豆といった資源・食料の主要な調達先の一つであり、世界最大級の日系人社会を抱える国でもある。

また、在日ブラジル人社会、特に製造業が集積する東海・北関東地域に暮らす人々の中には、在外投票でこの選挙に一票を投じる人もいるとみられる。海の向こうの司法危機が、日本国内に暮らす有権者の一票にも及んでいる点は、意外に知られていない接点だろう。ブラジルの政局を単なる南米の内政問題として片づけず、日本との経済的・人的なつながりを踏まえて注視する価値がある。