気候・災害

アマゾン先住民保護区に500人超侵入、放火相次ぎ裁判所命令も履行されず

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ブラジル北部パラ州にある先住民保護区「イトゥナ/イタタ」に、ここ数週間で500人を超える人々が侵入し、違法な道路を切り開いて放火を繰り返している。この土地には外部と接触せずに暮らす先住民、イガラペ・イピアサヴァの人々が住む。連邦裁判所は現地時間8月26日、政府に48時間以内の治安部隊派遣を命じたが、現地時間9月11日時点でも部隊は到着していない。

何が起きたのか

先住民保護を担う政府機関ファナイ(Funai)と連邦警察が上空から確認したところ、侵入者は重機やチェーンソーを使い、保護区内に30キロを超える森林の小道と違法な道路を切り開き、土地を区画割りしていたという。連邦検察(MPF)の発表によると、査察の直後に火が放たれるケースが相次いでおり、検察はこれを「明白な報復であり、脅しを狙ったもの」だとしている。ある音声記録には、男が100〜200人に対し、ファナイの職員を取り囲み、車両を焼き払って徒歩で追い出すよう促す内容が含まれており、この記録は検察の訴訟資料として提出された。

連邦裁判所は現地時間8月26日、国家公共安全部隊の派遣を政府に命じたが、実行されないまま2週間以上が経過した。政府側はパラ州政府の許可が必要だと主張しているが、州側は協力していない。これに対し連邦検察は、連邦が管理する土地であれば州の許可なしに部隊を派遣できるはずだと反論し、部隊を十分に派遣しなかった場合は政府に1日あたり5万レアル(約9000ドル)の制裁金を科すよう裁判所に求めている。

環境機関イバマ(IBAMA)が現地の8月31日の週に査察を行い重機や車両を破壊したところ、その直後に侵入者が森に火を放ったと、孤立部族・最近接触した先住民の観測機関(OPI)副コーディネーターのヘレナ・パルムクィスト氏は述べている。同氏は「今いちばん心配なのは火災の状況だ」と語り、今年のアマゾンの乾季はこれまでよりはるかに強いエルニーニョ現象が見込まれ、森が燃えやすくなっているとの見方を示した。

背景

今回の侵入が急増した背景には、パラ州が新たな州法で「バカジャイ環境保護区域(APA Bacajaí)」を設けたことがある。この枠組みは私有地の所有者に住居の建設や家畜の飼育を認めるものだが、その区域は、連邦が保護する先住民地イトゥナ/イタタと直接重なっている。当局によれば、この州法と連邦法の食い違いが、土地を奪って牧畜などの農業利用に転用しようとする者たちに利用されているという。イトゥナ/イタタは現在、外部と接触しない先住民を保護するための一時的な土地利用制限の対象となっている。

ブラジルには、外部社会と接触せずに暮らす先住民の集団が複数確認されており、こうした集団は外部から持ち込まれる感染症への免疫がないため、接触や土地への侵入自体が生存を脅かすとみられている。こうした集団を保護するために設けられているのが、保護区や土地利用の制限だ。土地を先に既成事実として占拠し、後から合法化を狙う手口はブラジルのアマゾンで繰り返し指摘されてきた問題で、今回のケースは州法と連邦法の矛盾がその手口に利用された例といえる。

日本にとっての意味

侵入の目的として挙げられているのは牧畜などの農業利用であり、これはブラジル産の牛肉や大豆といった農産物の生産と切り離せない問題だ。日本はブラジルから大豆や食肉、コーヒーなどを継続的に輸入しており、その生産地の一部でこうした土地紛争や森林破壊が起きていることは、遠い国の話では済まない。近年は、食品や飼料の調達先が森林破壊に関与していないかを確認する動きが企業の間で広がりつつあり、この種のニュースはそうした確認の材料にもなる。

また、外部と接触せずに暮らす先住民の生存が脅かされているという人権上の問題は、気候変動や生物多様性の議論とも重なる。アマゾンの熱帯林は地球規模の炭素の貯蔵庫であり、そこに住む先住民の存在自体が森林保全に寄与してきたという指摘もある。気候変動対策や生物多様性の保全、人権という複数の切り口から日本の読者にも関わりのある出来事だ。