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中国、石炭火力は反発しても産業部門で化石燃料離れ進む

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中国のエネルギー分野の国際的なシンクタンク、エンバー(Ember)の新しい分析によると、中国の産業界では、エネルギー源が石炭・石油・ガスから風力・太陽光・蓄電池による電力へと徐々に置き換わりつつある。全国レベルの統計では2026年上半期に石炭火力発電が反発しているが、省ごと・業種ごとに見ると、化石燃料が徐々に締め出されていく動きが読み取れるという。統計全体にはまだ表れていない変化が、部分的なデータには先行して表れている。

何が起きたのか

中国では2025年、電力需要が前年比5%増えたにもかかわらず、その増加分をすべてクリーン電力(風力・太陽光など)で賄い、石炭火力による発電量は10年ぶりに減少した。ところが2026年上半期には石炭火力発電が反発しており、全国統計だけを見ると脱石炭が進んでいるとは言い切れない状況にある。

エンバーが分析した中国の26の省・地域のうち17では、2021年から2025年にかけて石炭火力発電の伸びが止まった。これには中国南部の湖南省や、セメント生産などエネルギー多消費型の産業を抱える山東省といった主要な産業拠点も含まれる。これら17の省・地域は、中国の火力発電設備全体の半分以上を占めている。

業種別では、追跡対象の11業種のうち8業種で化石燃料の使用量がピーク時から26〜71%減少した。対象には化石燃料の採掘や、繊維、機械、食品飲料、輸送機器、化学素材などの製造業が含まれる。機械や設備、繊維のように電化が比較的容易な業種では、最終的なエネルギー消費のおよそ4分の3をすでに電力が担っているという。

エンバーの上級エネルギーアナリストで報告書の主執筆者であるムイ・ヤン氏は、Climate Home Newsの取材に対し「中国の産業経済のエネルギーの土台が変わりつつある」と述べ、化石燃料が担ってきた役割が各分野で徐々に電力に置き換わっていると説明した。

背景

中国は石炭火力への依存度が高い国として知られてきたが、今回の分析が示すのは、国全体の発電構成の数字だけでは見えにくい、産業構造そのものの変化である。2024年時点で電力は中国の最終エネルギー消費(生産・輸送段階のロスを除き、実際に消費者や工場が使うエネルギーの量)の29%を占めており、これは欧州の約23%、米国の約21%より高い。つまり中国の経済活動では、他の主要経済圏よりも電力に依存する形への移行がすでに進んでいるとみられる。

こうした変化を支えているのが、風力・太陽光発電の普及だ。再生可能エネルギーの拡大で電力価格が下がったことが電気自動車の急速な普及を後押しし、それがさらに系統の需給調整に欠かせない蓄電池の需要を押し上げるという連鎖が生まれているとみられる。中国のクリーンエネルギー機器の製造は、投資や雇用、輸出収入を生む成長分野にもなっており、アジア・ソサエティー政策研究所(Asia Society Policy Institute)の中国気候ハブ責任者、リー・シュオ氏はこの分野での中国の優位性を「後戻りしにくい」と評価している。ただし石炭火力が2026年上半期に反発したことが示す通り、この移行が一直線に進むとは限らない。

ドイツの化学大手BASFは2026年に入り、中国南部で再生可能エネルギーだけを使う新工場を稼働させたと発表しており、同社は従来型の石油化学プラントに比べ排出量を最大50%低く抑えられる可能性があるとしている。金属精錬・加工のような排出削減が特に難しいとされる分野でも化石燃料使用の頭打ち傾向が見られ始めており、エンバーはこれを、移行が難しい産業にも変化が及び始めている兆しだと位置づけている。

日本にとっての意味

今回の分析が示す業種、すなわち繊維や機械、食品飲料、輸送機器、化学素材は、いずれも日本が中国から輸入している品目と重なる。中国の工場で使われる電力の構成が石炭から再生可能エネルギーへ移っていけば、これらの製品の生産コストや排出量の水準も変わっていき、日本企業の調達価格や取引先の脱炭素対応に影響が及ぶ可能性がある。

BASFのように中国国内で再生可能エネルギーだけの工場を稼働させる例が出てきたことは、中国に生産拠点を持つ日本企業にとっても参考になる。取引先や競合が現地の安い再生可能エネルギーを使って排出量を削減できるようになれば、サプライチェーン全体の排出量の開示や比較を求められる場面で、日本側の対応が遅れているという指摘を受けかねない。

最大の貿易相手国である中国のエネルギー構造の変化については、統計上の総量だけを見ていると実態を見誤る恐れがある。今回の分析が強調するように、省別・業種別のデータには全国統計より先に構造変化の兆しが表れており、日本の企業や政策担当者が中国の脱炭素の進み方を評価する際には、こうした細かいデータも合わせて追う必要がある。