気候・災害

英国6月の記録的猛暑、救急出動が過去最多水準に イングランド10隊中4隊

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英国で2026年6月、気温が37度を超える記録的な猛暑が発生し、イングランドの救急サービスに過去最多水準の出動が相次いだ。英メディアCarbon Briefが情報公開請求で入手したデータによると、イングランドの救急10隊のうち4隊で、現地の6月23〜27日の少なくとも1日に、「カテゴリー1」と呼ばれる生命に関わる緊急事案への対応件数が過去最多となった。別の2隊も119番に相当する「999番」通報の受信件数で過去最多を更新した。

何が起きたのか

猛暑が最も厳しかった現地の6月26日には、イングランド全体でカテゴリー1の出動が4,084件に達した。夏場の平均的な1日あたりの件数は約2,500件とされ、この日は平常時の1.6倍程度の出動があった計算になる。ロンドンや南東沿岸、南中部、北東部を担当する各隊はいずれもこの期間中に1日あたりの過去最多を記録している。

オックスフォードシャーからケント州までをカバーする南東沿岸と南中部の両隊では、現地の6月25〜27日の3日間すべてでカテゴリー1の出動が過去最多となった。南西部と東部の両隊は、ノーフォークで英国の6月として過去最高となる気温が観測された現地の6月26日に、999番通報の件数が過去最多に達した。

当局はこの期間、イングランド全土に政府の熱波警報の「オレンジ」または「レッド」を発令した。レッド警報はこれまでに2回しか発令されたことがなく、政府の警報の定義では「健康な人でも生命に危険が及ぶ重大なリスク」を示すとされる。2026年夏の英国全体では、研究者の推計でおよそ3,000人の熱波関連死があったという。

北東イングランド救急サービスで危機管理を担当するスチュ・ホリデー氏はCarbon Briefの取材に「高温が続く時期には、脱水症状や熱疲労、熱中症の患者からの通報が増える。心臓や呼吸器の持病がある人は、高温が長く続くことで症状が悪化することもある」と述べた。労働組合UNISONは、空調が故障または未設置の車内で連続して出動を重ねる救急隊員の負担にも警鐘を鳴らしている。なお北東部の隊は2021年以降、南中部の隊は2022年以降のデータしか保有しておらず、「過去最多」の比較対象となる期間は隊によって異なる点には留意が必要だ。

背景

イングランドの救急サービスは例年、寒さと感染症が重なる冬場に最も忙しくなるとされてきた。しかし今回のデータは、猛暑の日が冬の繁忙期に匹敵する、あるいはそれを上回る負荷を医療現場にもたらしつつあることを示している。Carbon Briefによれば、これは医療システム全体で見られる傾向だという。データ全体としては、新型コロナウイルス感染症の流行がピークだった時期よりも今回の猛暑期の方が救急の出動件数は多かった。

ただし、救急需要の増加は猛暑だけが原因ではない。高齢化の進行や疾患の複雑化、精神的な不調を抱える人の増加など複数の要因が重なり、救急への需要は近年一貫して伸びているとされる。実際、Carbon Briefに報告された過去最多記録の大半は2020年代に集中しており、2026年は年間を通じて救急需要が過去最多になる見通しだという。今回の猛暑時のデータは、こうした長期的な需要増の傾向に、極端な高温という新たな圧力が重なった結果を示すものと位置づけられる。

日本にとっての意味

日本でも夏の高温時には、環境省と気象庁が共同で「熱中症警戒アラート」を発表し、外出や運動を控えるよう呼びかける仕組みがある。これは英国のオレンジ・レッド警報と役割が近い制度だ。また消防庁は夏季に熱中症による救急搬送件数を定期的に集計・公表しており、搬送先の病院がすぐに決まらない事案の状況も把握の対象になっているとされる。つまり日本では英国と異なり、搬送件数そのものは比較的公開されやすい情報だといえる。

一方で今回のCarbon Briefの報道が示すのは、気温の記録は広く報じられても、それが救急という医療インフラにどれだけの負荷をかけたかを表す数字は、情報公開請求の手続きを経て初めて明らかになった点だ。日本では搬送件数の集計自体は定期的に公表されているものの、猛暑の日が冬の繁忙期を上回るほどの負荷になっているかどうかを、英国の事例のように具体的な比較で捉える視点は参考になる。気候変動で猛暑日が増える傾向が続けば、救急搬送のひっ迫は季節を問わない課題として位置づけ直す必要が出てくるかもしれない。