気候・災害

熱波、夏だけでなく春や秋にも忍び寄る 世界規模の研究

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世界の陸地の半分以上で、極端な暑さが従来の「暑さの季節」から前後の月へとはみ出していることを示す研究が発表された。科学誌に2026年に掲載された論文によるもので、はみ出す方向は地域によって異なり、春側に偏る地域と秋側に偏る地域がはっきり分かれるという。著者らはCarbon Briefへの寄稿で、暑さの時期そのものが年間でどう変化しているかを世界規模で測ったのは今回が初めてだとしている。

何が起きたのか

研究チームは、1980年代に極端な暑さが最も集中していた連続する3か月を地点ごとの「暑さの季節」と定義し、その前後2か月を「ショルダーシーズン(shoulder season)」と位置づけた。そのうえで、1980年代と2015〜2024年のデータを比べ、年間の極端な暑さの日のうちショルダーシーズンに起きた割合がどう変わったかを調べた。

結果、世界の陸地の半分を超える地域で、極端な暑さがショルダーシーズンへ広がっていた。西ヨーロッパ、南部アフリカ、インド北西部では、従来の暑さの季節より前の月に暑さが増えていた。一方、アメリカの多くの地域、中国東部、北アフリカ、東ヨーロッパでは、従来の季節より後の月に暑さが増えていた。

研究では、乾いた暑さと湿気を伴う暑さを分けて分析している。両者の「暑さの季節」は場所によって1か月ほどずれることも分かった。特にモンスーンの影響を受けるメキシコ北西部やインド中部では、乾いた暑さの季節が先に来て、その後に湿気を伴う暑さの季節が続くという。

研究チームは、年間を通じた平均気温が底上げされたことだけでは、この時期のずれを説明できないとしている。

背景

気象学上の「夏」は、北半球では6〜8月、南半球では12〜2月と単純に区切られることが多い。しかし実際に極端な暑さが集中する時期は場所ごとに異なり、この区切りとは必ずしも一致しない。今回の研究が独自に「暑さの季節」を地点ごとに定義し直したのは、この食い違いを踏まえたものとみられる。

興味深いのは、1980年代の時点では、季節による気温差が小さいはずの熱帯地域でも、極端な暑さの多くが特定の3か月に集中していたという点だ。研究では、世界の陸地の約93%で、極端な乾いた暑さの日の8割以上が従来の暑さの季節に収まっていたとされる。それが近年、境目からじわじわとはみ出し始めているというのが今回の発見の核心にあたる。

季節外れの暑さがなぜ危険なのか。研究チームは、その年最初の熱波や春先の熱波は、体がまだ暑さに慣れておらず、冷房や公共の涼み場所といった対策も十分でないため危険度が高いと説明する。逆に秋の熱波は、夏を通じて積み重なった暑さの負荷の上にさらに重なるため、体力もインフラも既に消耗した状態を襲うことになる。

分析には、観測データと数値モデルを組み合わせて過去の気象を再現した「再解析データ」と呼ばれる2種類のデータセットを用い、結果の妥当性を確かめている。湿気を伴う暑さの指標には、1950年代に米軍が開発し、屋外スポーツや労働現場の暑さ管理の国際的な基準として使われてきた「暑さ指数(WBGT、Wet-Bulb Globe Temperature)」を用いた。

日本にとっての意味

今回の研究が示した地図に、日本は名指しで登場していない。それでも、この研究が明らかにした構造は日本の暑さ対策と無縁ではない。日本の熱中症対策で使われる「暑さ指数」は、この研究が湿気を伴う暑さの測定に用いたWBGTそのものである。学校の部活動や体育の授業、屋外の労働現場では、この指数をもとにした基準で活動の可否が判断される仕組みが広がっている。

国内でも、夏本番の前後、つまり初夏や9月以降の残暑で体調を崩す例が指摘されてきた。今回の研究が指摘する「その年最初の暑さは体が慣れていないぶん危険」「秋の暑さは夏の疲労の上に重なる」という構図は、まさにこうした時期のリスクと重なる。

暑さ対策の多くが「夏の3か月」を前提に設計されているとすれば、極端な暑さの時期そのものが動いているという今回の知見は、対策を発動する時期や学校行事の設定を見直す材料になり得る。世界的な傾向として季節の境目がぼやけつつあるという指摘は、日本国内での暑さ対策の運用を考えるうえでも参考になるだろう。