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ベネズエラ、政権上層部の変化後も国家による人権弾圧が継続と国連調査団

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国連の独立調査団が現地時間の9月15日、ベネズエラの人権状況に関する報告を公表した。エル・ロデオ最高警備刑務所では、政治的理由で拘束された人の一部がのどにチューブを差し込む処置(挿管)を強制され、地下の貯水槽に長期間閉じ込められていたという。フエルテ・グアイカイプロの軍施設でも、地面を掘り下げた穴のような独房に収容され、寒さや食事の制限にさらされる実態が確認された。

何が起きたのか

調査団は、これらの行為を拷問に相当するものと位置づけた。今年1月上旬、当時の大統領だったニコラス・マドゥロ氏が米軍に拘束され、政権上層部に変化が生じた。しかし調査団は、弾圧や重大な人権侵害、人道に対する罪に関与してきた国家機関の骨格はほぼそのまま残っているとみている。

長期の拘束や強制失踪の件数は減り、数百人の政治犯が釈放されるなど一定の改善も見られた。それでも、反対派を取り締まるために使われてきた多数の法律は効力を保ち、諜報機関や治安部隊の組織や手法も基本的に変わっていない。政府を支持する武装した民間グループ「コレクティボス(colectivos)」の武装解除も進んでおらず、地域社会への威嚇や暴力の温床になっている。

調査団がかつて重大な人権侵害への関与を指摘した当局者のうち、少なくとも19人が要職に留まるか、要職に配置転換されていた。過去の人権侵害や罪の責任を問う動きもないという。ジャーナリストや市民社会の活動も、依然として妨害を受けていると報告された。

市民社会団体の記録では、現地時間の2025年9月1日から2026年7月29日までに少なくとも214件の恣意的拘束が政治的理由で行われた。ただしその9割以上は2025年末までに集中しており、現地時間1月3日の政権上層部の変化以降は、反対派活動家やジャーナリストらを威嚇する目的の短期的な拘束が繰り返し確認されているという。政治犯の釈放が進んだ結果、NGOの推計では現在も379人から500人が拘束されているとみられるが、政府が透明な情報を出していないため正確な数はつかめていない。

調査団は、現地時間1月3日以降だけで新たに64件の拷問事例を確認したとして、こうした行為が今も広く行われていることを示すとした。国家の施設に拘束された人の多くは安全な飲料水や十分な食事、医薬品、医療を得られず、拘束中に死亡する例も多いという。

街頭の物売りだったビクトル・ケロ・ナバス氏は、2025年1月にあいまいな理由で拘束され、強制失踪の状態に置かれたまま、肺血栓塞栓症に伴う急性呼吸不全で拘束中に死亡した。母親のカルメン・テレサ・ナバスさんは16か月にわたり拘置施設や裁判所、行政窓口、さらには遺体安置所まで息子を捜し歩き、2026年5月になってようやく息子がおよそ1年前に拘束中に死亡していたことを知らされた。その10日後、母親自身も亡くなった。

調査団の議長を務めるソフィア・マチェル氏は「最も過酷な弾圧の一部が減ったことは注目に値するが、それはまだ、こうした弾圧を可能にしてきた仕組みそのものの転換には全くつながっていない」と述べた。調査団の専門家の一人は、国家当局が説明責任を果たし、被害者を中心に据えた枠組みで過去を清算するよう求めた。あわせて、ベネズエラは国際刑事裁判所(ICC)の設立条約であるローマ規程からの離脱を撤回し、同裁判所や他の国際的な人権の仕組みに全面的に協力すべきだと訴えた。

背景

ベネズエラでは、2013年に死去したチャベス前大統領の後を継いだマドゥロ氏の下で、長年にわたり強権的な統治体制が敷かれてきたとされる。2024年の大統領選をめぐっては結果の正当性に疑義が示され、国際社会からの批判が強まっていた。国連人権理事会は2019年にベネズエラの人権状況を調べる独立調査団を設置し、その後も任期を延長しながら監視が続いてきた。

今回の報告が示すのは、政権上層部が変わっても、弾圧を支えてきた法律や組織、人員がそのまま存続すれば、実態としての人権侵害は簡単には終わらないという構図だ。国際刑事裁判所(ICC)もベネズエラの状況を捜査対象としてきたが、同国は2026年7月にローマ規程からの離脱を通告しており、国際的な司法の枠組みからは距離を置く姿勢を続けている。

日本にとっての意味

日本はICCの締約国であり、財政面でも同裁判所を支える主要国のひとつとされる。ベネズエラがローマ規程からの離脱を通告したことは、日本が資金や制度面で支えてきた国際的な人権の仕組みが、実際にどこまで機能するのかという問題として読める。国連人権理事会の調査団の設置や任期の延長も加盟国の決議によって決まる仕組みで、日本もその決定に関わりうる立場にある。

経済や貿易の面で日本とベネズエラの結びつきは薄く、直接の実害を感じる読者は多くないだろう。ただ、ケロ・ナバス氏の事例のように、国家が拘束の事実を開示しないために家族が何か月も安否を追い続けるという構図は、拘束された人への領事アクセスや情報公開の在り方を考える手がかりになる。独裁的な体制の下で何が起きるのかを具体的に知ることは、他の国の人権状況を評価する際の材料としても役立つはずだ。