感染症・健康

米空港の空気からコロナとインフル検出、CDCが下水監視の補完手法と報告

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米疾病対策センター(CDC)の研究チームが、サンフランシスコやニューアークなど米国の空港4カ所で採取した空気サンプルから、新型コロナウイルスとインフルエンザウイルスを高い割合で検出したとする研究結果を発表した。研究はPLOS Global Public Health誌に掲載された。空気を調べる手法が、下水を調べる従来の監視方法を補完し得ることを示したとしている。

何が起きたのか

研究チームは2023年から2024年にかけて、サンフランシスコ、ニューアーク・リバティ、ワシントン・ダレス、ダラス・フォートワースの各国際空港で、税関・出入国審査エリアや国際線到着エリアといった人が集まる場所に空気サンプラーを設置した。1日10時間、月曜から木曜は20時間分、週末は30時間分をまとめて回収し、PCR検査にかけた。

集まった463件の空気サンプルのうち、98.3%で新型コロナウイルスが、17.2%でインフルエンザAが検出された。ただしこの数字は病原体の存在が確認された割合であり、ごく微量でも陽性と出るPCR検査の性質上、感染の広がりの大きさをそのまま示す指標とはいえない。

このうち2つの空港では、空気サンプルの結果を航空機の汚水、渡航者の鼻ぬぐい検体、米国内の臨床サーベイランス(surveillance、疾病の発生状況を継続的に把握する仕組み)データと突き合わせる分析も行われた。インフルエンザAの陽性率はこれら3つのデータと似た傾向を示した一方、新型コロナウイルスの陽性率はうまく一致しなかったという。

遺伝子配列を解析したところ、空気サンプルから検出された新型コロナウイルスの系統(lineage、ウイルスが変異しながら枝分かれしていく系統群)は、同じ時期に同じ空港の下水から見つかった系統と一致した。さらに空気サンプルからは合計30種類のウイルスが見つかり、新型コロナ、インフルエンザ、ボカウイルス(bocavirus、乳幼児の呼吸器や消化器の感染症を主に引き起こすウイルス)、季節性コロナウイルスについては、遺伝情報を高い精度で読み取れる質の良いゲノムも得られた。

研究チームは論文で「この手法は、症状が出ていない人や発症前の人など、通常であれば臨床検査を受けたり下水を利用可能な形で提供したりしない多様な人々から呼吸器系の病原体を捉えるのに特に効果的だ」と述べている。

背景

新型コロナの流行以降、各国は空港や下水を使った感染症監視の仕組みを試してきた。下水を調べる方法は、航空機のトイレを使った乗客の排せつ物に含まれるウイルスをまとめて検出できる利点があるが、機内のトイレを使わなかった乗客の情報は拾えないという限界がある。空気サンプリング(air sampling)は、到着ロビーのような共用空間に漂う微粒子を継続的に集める方法で、そこを通った人であれば症状の有無にかかわらず対象になり得る点が特徴とされる。

研究チームは論文で「空港など国境を越える入り口での空気中のウイルス検出は、将来のパンデミックへの備えとして、複数の手法を組み合わせた監視体制の重要な一部になり得る」とも述べており、感染症の早期把握や、換気や空気清浄といった対策の判断材料になり得るとしている。ただし今回の研究は特定の4空港で2023年から2024年にかけて集めたデータに基づくもので、他の空港や地域でも同様の結果が得られるかは今後の検証課題として残る。

日本にとっての意味

日本の空港でも、入ってくる感染症を捉える仕組みは動いている。入国時感染症ゲノムサーベイランスは成田、羽田、中部、関西、福岡の5空港で実施されており、発熱や咳などの症状がある入国者のうち協力を得られた人から鼻腔ぬぐい液を採取する。検体は民間の検査会社でPCR検査にかけられ、国立健康危機管理研究機構が新型コロナとインフルエンザのゲノム解析を担う。

ただしこの仕組みが拾えるのは、症状があり、なおかつ協力に応じた人に限られる。今回の研究チームが空気サンプリングの利点として挙げたのは、ちょうどその外側だった。症状が出ていない人や発症前の人など、通常なら臨床検査を受けず、下水にも現れない人々から病原体を捉えられるというのが論文の主張だ。検疫の窓口で検体を出さない人も、到着ロビーの空気は共有している。

もっとも、そのまま持ち込めるわけではない。この研究自体、新型コロナの陽性率が下水や臨床のデータとうまく一致しなかったと報告している。どの程度の感度で何を判断できるのかが定まらなければ、水際の運用には乗せにくい。既存の監視を置き換えるものではなく、いまの制度が設計上たどり着けない層を埋める候補として見ておくのが妥当だろう。