ベトナム北部で豪雨と洪水、住宅2000棟超が浸水
ベトナム北部で現地時間の9月17日までの数日間に続いた豪雨により、複数の河川が危険水位を超え、住宅2000棟超が浸水した。首都ハノイでは道路が冠水し、場所によっては深さが1メートル近くに達して、通勤や通学に支障が出ている。南部でも現地の9月17日から大雨が予想されており、ホーチミン市を含む地域で警戒が呼びかけられている。
何が起きたのか
ベトナムの防災当局や国営メディアによると、北部から中北部にかけての地域では現地時間の9月17日までの数日間に、場所によって50センチを超える雨が降った。現地時間16日夜から17日朝にかけての降雨量が15センチを超えた地点もあり、17日午前にはハノイ市内の多くの道路が冠水し、場所によっては深さが1メートル近くに達した。通勤や子どもの送迎など、外出そのものが難しい状態になったという。
首都南西部を流れるブイ川の水位が上昇して住宅への浸水の恐れが出たため、当局は数百人規模の兵士を投入し、住民の家財を高所へ移す作業を支援した。ハノイの多くの高校や大学は現地時間17日午後、休校またはオンライン授業への切り替えを余儀なくされた。
被害が特に大きいのはニンビン省とタインホア省で、ともに首都南方の低地や丘陵地を含む。住宅2000棟超が浸水し、主要な交通路の多くが遮断され、1000世帯超が孤立した。タインホア省では通学路の危険を理由に、当局が生徒に自宅待機を指示した。
豪雨と洪水により、稲作を中心に約1万ヘクタールの農地が水没・損傷し、家畜や家禽も多数が死んだという。被害が大きかったのはニンビン、タインホア、ゲアンの3省だ。
ニンビン省の住民トラン・ゴック・タイさんは国営放送VTVの取材に「洪水は毎年のことだ」と述べ、飲料水や食料を用意して備えていたと語った。
南部では、北から南下する寒気の影響で、現地の9月17日から21日にかけて大雨が予想されている。洪水の常襲地であり、ベトナム経済の中心地とされるホーチミン市では10〜20センチの降雨が見込まれ、地域によってはさらに多くなる可能性がある。この予報はベトナム南部の気象機関(Southern Regional Hydro-Meteorological Center)によるもので、当局は低地や河川沿いの浸水に警戒するよう呼びかけている。
背景
ベトナムは世界でも気候変動の影響を受けやすい国の一つとされ、モンスーン期の豪雨や台風による洪水が毎年のように発生している。2025年には熱帯暴風雨ウィパー(7月)が大雨と洪水をもたらし、8月には熱帯暴風雨カジキがさらなる洪水と土砂崩れを引き起こした。9月の台風ブアロイでは少なくとも26人が死亡し、10月には中部の古都フエやホイアンに加え、北部の広い範囲が水害に見舞われた。
こうした一連の激しい嵐を受け、ベトナム政府は洪水への備えと対応の仕組みを見直す動きを進めてきたとされる。
日本にとっての意味
ベトナムは、日本で働く外国人の出身国として最大だ。厚生労働省の「外国人雇用状況」の届出によれば、2025年10月末時点で国内の外国人労働者は約257万人と過去最多を更新し、そのうちベトナム人は60万5906人で全体の23.6%を占めた。国籍別で2位の中国を17万人余り上回る。日本の職場にとって、ベトナムの災害は遠い国の出来事ではない。
しかも今回、農地の被害が大きいとされたニンビン、タインホア、ゲアンの3省は、日本への働き手を送り出してきた地域と重なる。タインホア省とゲアン省は、隣接するハティン省とともにベトナム北中部の主要な送り出し地域とされ、若年層の県外・国外就労が常態化してきた。日本で働く人の実家が浸水した、という事態が現に起きている可能性がある。
被害の中身も、その構造に関わる。稲作を中心に約1万ヘクタールの農地が水没・損傷し、家畜や家禽も多数が死んだ。送り出し地域の世帯は農業に依存していることが多く、収入源が一度に失われれば、海外での就労に頼る圧力はさらに強まる。日本側から見れば、働き手の背景にある事情の一部がここにある。
渡航や出張の予定がある場合は、南部の状況にも注意がいる。ホーチミン市を含む地域では現地の9月21日にかけて大雨が予想されており、同市は洪水の常襲地でもある。