感染症・健康

米政府検証、コロナ禍の防護具緊急輸送で輸送期間を大幅短縮と報告

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米会計検査院(GAO)が、新型コロナウイルス感染症の流行初期に医療用防護具(PPE)の輸入を早めた連邦プログラム「Project Airbridge」の検証報告を公表した。海上輸送に頼っていた調達を空輸に切り替え、届くまでの期間を大幅に縮めたという内容だ。一方で報告は、PPE輸送の遅れが感染拡大に関わった可能性も指摘している。

何が起きたのか

GAOの報告によると、Project Airbridgeは2020年3月から6月にかけて、米連邦緊急事態管理庁(FEMA)の資金で437便を運航し、海外メーカーから約12億点のPPEを米国に運び込んだ。内訳は手袋が約9億4500万点、マスクが1億2600万点、ガウンが6700万点、N95マスクが500万点だった。船便ではおよそ40日かかっていた輸送期間が、空輸への切り替えによって7日程度まで短縮されたとしている。

この取り組みには複数の連邦機関が関わった。米連邦航空局(FAA)は2020年4月から9月にかけて、PPEを運ぶ4417便の離着陸を優先的に扱ったほか、旅客便が減った時期に旅客機の客室に貨物を積めるようにする規制上の特例も認めた。米運輸省(DOT)は2020年3月から2022年3月にかけて、主に中国からの外国貨物便2200便の認可手続きを早めたほか、PPEを運ぶトラック運転手の運転時間の上限(14時間のうち最大11時間とする規定)を超える運行を認める特例や、鉄道事業者に検査・試験の免除を認める措置も講じた。

もっとも、物流全体が順調だったわけではない。医療用品を扱う業界団体(Health Industries Distributors Association)の推計では、2021年後半には医療用品の輸送に平均37日の遅れが生じており、内訳は港での滞留が17日、鉄道駅での滞留が11日、トラック輸送の遅れが9日だったという。これは貨物量の急増と港湾の混雑が原因とされる。GAOの報告は、PPE輸送の遅れが新型コロナの感染拡大に関与した可能性があると指摘している。同感染症による米国内の死者は、2024年6月時点で約120万人とされる。

GAOは港湾運営者や海運業者など21の物流関係者に聞き取りを行った。多くの回答者は、連邦政府の関与拡大は不要だったか、むしろ混雑を悪化させた可能性があると答えた。民間主導の方が輸送を早めるのに適していたという意見も複数あった。

一方で、連邦政府がもっと情報共有や指針を充実させていれば、どの荷物がPPEであり、優先的に運ぶべきものかを民間が把握しやすかったはずだという指摘もあった。報告書によれば、関係者は、業界が輸送網を活用しPPEを含む出荷物を特定して優先輸送するのを助けるため、連邦政府がより多くの情報伝達や指針、データを提供できたはずだと提案したという。あわせて「サプライチェーン・コントロールタワー(Supply Chain Control Tower)」がPPE配送の優先地域を特定するために提供したデータなど、政府の情報共有の取り組みを評価する声もあったという。

流行後、DOTは政府と民間の情報共有を改善し、将来の混乱に強い物流網を目指す戦略計画をまとめている。

背景

コロナ禍初期の2020年前半は、世界的にマスクや手袋などの医療用防護具が不足し、各国が輸出制限や緊急調達に動いたとされる時期だった。米国も例外ではなく、医療現場でN95マスクやガウンが足りなくなる事態が相次いで報じられた。Project Airbridgeは、通常なら船便で1カ月以上かかる調達を空輸に切り替えることで、この不足を早期に緩和しようとした緊急対応策だったとみられる。

ただし今回のGAO報告が示すように、危機対応としての緊急輸送と、平時の物流網の強靭化は別の問題だ。2021年後半に生じた大幅な遅延は、Project Airbridge終了後の話であり、港湾混雑という別の要因によるものとされる。パンデミックのような突発的需要増に、平時の物流インフラがどこまで耐えられるかという課題は、米国に限らず多くの国で共通して指摘されてきた論点である。

日本にとっての意味

日本も2020年春、マスクの品薄と価格高騰を経験し、政府が布マスクの全戸配布や増産支援に動いた経緯がある。その後、経済産業省によるマスクなどの国内生産設備の導入支援や、政府による医療用物資の備蓄の見直しが進められてきたとされる。ただ、今回の米国の検証は、緊急調達を「早く届ける仕組み」だけでなく「情報を届ける仕組み」として設計する必要性を示している点で参考になる。

米国の事例で目を引くのは、輸送そのものを速めたProject Airbridgeが一定の効果を上げた一方、業界関係者の多くが連邦政府の直接関与の拡大には否定的で、むしろ優先輸送すべき荷物を見分けるための情報共有やデータ提供を求めた点だ。危機時に政府がどこまで市場に介入すべきかという論点は、日本の医療物資の備蓄政策や、今後起こりうる感染症危機での対応を考えるうえでも共通する課題といえる。また日本は医療用防護具の多くを海外生産に依存しており、輸送の遅れが感染拡大に関与した可能性があるという指摘は、輸入依存のサプライチェーンが抱えるリスクを改めて示すものでもある。