気候・災害

インドネシアRSPO認証農園内の保護区、火災でオランウータン生息地焼失

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インドネシア西カリマンタン州のパーム油農園内にある保護林で8月から火災が広がり、生息するボルネオオランウータンの救助活動が続いている。この農園はRSPO(持続可能なパーム油のための円卓会議)の認証を受けており、焼けている森は同農園が「保護価値の高い区域(HCV、High Conservation Value)」として自ら保全を約束していた場所だった。専門家は、森が回復できるかどうかも分からないと話している。

何が起きたのか

火災が起きたのは、ケタパン県にあるPTカユン・アグロ・レスタリ(KAL)社のパーム油農園内、657ヘクタールの泥炭湿地林。ここは約50〜60頭のボルネオオランウータンの生息地とされ、2015年10月にはNGOヤヤサン・インターナショナル・アニマル・レスキュー・インドネシア(YIARI)が保護した4頭を野生に返した場所でもあった。技術コンサルティング会社TheTreeMapの衛星分析によると、火災は現地時間8月8日ごろ、農園の端にある水路沿いで発生し、その後西側の保護林へ広がった。

現地では今も煙が立ち込め、地面が高温で危険な状態が続いているという。泥炭火災は地表の炎が消えた後も地下でくすぶり続けることがあり、救助隊員にとっても大きな危険となっている。YIARIのチームは8月中、ケタパン県内で森林・土地火災の影響を受けたオランウータン7頭を保護した。焼失した森にいたオランウータンのうち、どれだけが助かったのかはまだ分かっていない。

KALの農園には合計3,844.52ヘクタールのHCV区域があり、そのうち657ヘクタールと2,330ヘクタールの二つが主要な保護区とされている。生物学者でボルネオ・フューチャーズ社のマネージングディレクター、エリック・マイヤールト氏によると、657ヘクタールの区域には2019年時点で推定50〜60頭、より広い2,330ヘクタールの区域には火災前の時点で約200頭のオランウータンが生息していたという。

NGOサンガ・ブミ・レスタリの空間分析では、KALのHCV区域のうち約1,176ヘクタールが火災の影響を受けたとされる。一方でマイヤールト氏は、現地時間9月12日撮影の衛星画像を見ると657ヘクタールの区域はほぼ全域が被害を受け、2,330ヘクタールの区域も少なくとも半分が焼けているとみている。マイヤールト氏は「この森が回復できるかどうかは何とも言えない」と話している。

KALの親会社でシンガポール上場のファースト・リソーシズ社は、すべての植栽事業でゼロバーニング(zero-burning、火を使わずに土地を開墾する方針)を徹底していると説明する。火災の危険が高い区域の地図作成、日々の衛星監視、ドローンによる監視、地上パトロール、消火チーム、泥炭地の水管理などを組み合わせた対策を取っているという。同社によれば、火は幅・深さともに約4メートルの水路と消火活動によって少なくとも現地時間8月18日まで農園の境界付近で食い止められていた。しかしその後、農園外で発生した火災が流れ込み、拡大と延焼の速度が速すぎて完全な封じ込めができなくなったとしている。

同社はまた、西カリマンタン一帯で火災が広がった背景として、エルニーニョに伴う乾燥した天候や、地域住民が火を使って土地を開墾する慣行を挙げている。ただしこれはあくまで同社の説明であり、現時点では独立した検証は確認されていない。同社は保護区を放置したとの見方を否定し、保全チームが政府当局や他の関係者と協力してオランウータンの監視や避難誘導にあたったと説明している。

背景

RSPOは、パーム油の生産による森林破壊や生態系破壊を減らす目的で作られた国際的な認証制度で、農園が一定の環境・社会基準を満たしていることを企業や消費者に示す仕組みとされる。認証を受けた農園は、生物多様性や地域社会にとって特に重要な森を「HCV」として区分し、伐採や火入れをせずに保全することを求められる。今回火災の影響を受けた657ヘクタールと2,330ヘクタールの森は、まさにこのHCVとして保全が約束されていた区域だった。

インドネシアでは乾季になると、農地開墾や泥炭地の乾燥を背景に大規模な森林・土地火災が繰り返し発生してきた。泥炭地はもともと水分を多く含む土壌だが、排水路の整備などで乾燥すると極めて燃えやすくなり、一度火が入ると地下で長期間くすぶり続けるため消火が難しいとされる。企業側が主張するように乾燥した気候条件が要因の一端である可能性はあるが、実際にどこまで自然条件によるものか、農園側の管理に問題があったのかは、現時点では明らかになっていない。

日本にとっての意味

日本は東南アジア産のパーム油を食品や洗剤、化粧品などの原料として幅広く輸入している。ただ、食品表示上は「植物油脂」などとまとめて記載されることが多く、消費者が原料の産地や生産過程を目にする機会はほとんどない。そのため、RSPO認証マークは、パーム油が森林破壊と無縁であることを示す数少ない目に見える手がかりとして、多くのメーカーが調達方針や広告で活用してきたとみられる。

今回のように、RSPO認証を受けた農園が自ら保全を約束していたHCV区域そのもので、オランウータンの生息地の大半が焼けたとされる。この事実は、認証マークが実際にどこまで森林破壊を防げているのかという、制度の実効性そのものへの疑問につながる。企業側は自社の管理体制の徹底ぶりを強調しているが、その主張が正しいのか、それとも管理に不十分な点があったのかは、現時点では明らかになっていない。日本の消費者やメーカーにとっては、認証があるからといって現地の森が確実に守られているとは限らないという点を、今回の事案は具体的に示しているといえる。