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ライフジャケットに変形するトートバッグ、NYの作家5人が発表 気候変動週間に合わせ

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ニューヨークの作家5人が、紐を引くと膨らんでライフジャケットになるトートバッグを作った。変形にかかる時間は約15秒。気候変動による洪水の危険に目を向けさせるための作品で、売り物ではない。

何が起きたのか

作品の名は「Lifeline」。ニューヨーク・クライメート・ウィークに合わせて公開された。作ったのは、まだ名前を決めていない5人組で、これが最初の作品になる。

材料は市販のナイロン製ライフジャケットだ。制作に加わったデザイナーのガブリエラ・メストリネル氏によると、完成品を構成するのは約2.7メートル(3ヤード)のナイロン、ポリエステル製のファスナー、紐、金属製の留め具で、その大半は分解したライフベストから取った。素材は熱で溶かして接合し直している。

ふだんはトートバッグとして使う。ふたの中央から本体へ通るファスナーを開けると頭が通る穴になり、あとはふつうのライフジャケットと同じように紐を引けば膨らむ。取り外し式のレインフードが付き、使わないときはバッグの中にしまえる。試作の段階で、変形は15秒ほどで終えられたとメンバーのフィル・ル・ブラン氏は言う。

色はオレンジだ。ル・ブラン氏は、この色と膨らませる仕掛けを「非常事態の言語」と呼び、作品の要だとしている。

背景

発端は、ニューヨークの地下鉄で起きた浸水だった。日用品であるトートバッグと、非常時のためのライフジャケット。5人はこの二つの造形を一つの物に重ねることで、消費のためのファッションと気候変動の非常事態を同時に論じようとした。

論点の中心にあるのは、こうした物が必要になり、しかも今の状況では筋の通った物に見えてしまうことの不条理さだ。「このプロジェクトを貫く原則は、存在すべきでない必需品、ということだ」とル・ブラン氏はDezeenに語った。

作品に添えた写真も、その狙いに沿って作られている。5人はこのバッグを、ほとんど華やかに見えるように撮った。格好よく、普通に見えて、しかも実際に機能する。日常と非常事態を並べたときに生じる摩擦は意図したものだと同氏は説明する。写真には、地下鉄の車内でバッグをライフジャケットに変えている場面も含まれる。

ライフジャケットがバッグの中に「隠れている」ことは、5人が消費主義の悪い面と考えているものへの批評でもある。「私たちのスタイルとファッションと消費主義の内側に隠れているのは、紛れもない非常事態だ」とル・ブラン氏は述べた。同氏はこの作品を「物語の物体」と呼び、人が自分の選択について考えるきっかけになってほしいと話す。

概念を物の形にした作品はほかにもある。クリエイティブ会社Motherは、救命いかだとして使えるソファ「Bliss」を作った。スウェーデンでは、不動産会社リクスビッゲンとクリエイティブ会社BBDO Nordicsが、若者に買える金額から逆算した広さの住戸を実際に作り、住宅価格の高さを示してみせた。

日本にとっての意味

日用品の中に非常時の機能を隠しておく設計は、日本の教室に半世紀近く前からある。防災頭巾だ。ふだんは椅子に敷く座布団として使い、いざというときは頭にかぶって落下物から身を守る。起源は戦時中の防空頭巾で、鉄製のヘルメットを使えなかった女性や子どもが、布団の綿とはぎれで作ったものだった。想定する災害は地震の落下物であって洪水ではない。それでも、日常の道具の姿のまま非常時の機能を抱えておくという発想は、Lifelineと重なる。

違うのは、物として世に出ているかどうかだ。Lifelineは非売品の概念作品で、この物が必要になる世界そのものへの問いかけとして作られた。防災頭巾は実際に配られ、使われ、当たり前のものになった。「存在すべきでない必需品」は、日本ではとうに存在して、普通の持ち物になっている。

地下の浸水にも、日本には具体的な記憶がある。1999年6月29日の朝、福岡市の中心部で1時間に79.5ミリの雨が降った。福岡管区気象台の6月の1時間雨量としては、観測を始めた1939年以降で最も多い。博多駅周辺では地下街と地下鉄に濁った水が流れ込み、地下鉄は線路の冠水で一部の運転を止めた。ビルの地下にあった飲食店では、女性従業員が逃げ遅れて亡くなっている。

いま水防法は、浸水が想定される区域の地下街などに、洪水時の避難確保計画を作って訓練を実施することを求めている。国土交通省も地下空間の浸水対策のガイドラインをまとめた。5人が地下鉄の車内で撮った写真は、日本にとっては想像上の場面ではない。