ドイツ、エネルギー部門の化石燃料を2045年までにやめる工程表を公表
ドイツ政府が、電力・熱・輸送などエネルギー部門で化石燃料の使用を2045年までにやめる工程表を発表した。ニューヨークで開催中の国連総会に合わせて現地時間9月23日に公表したもので、ドイツはフランス、オランダに続き、同様の国別工程表を示した3カ国目となった。国連のグテーレス事務総長は現地時間9月22日の演説で、各国に同様の工程表の提出を求めていた。
何が起きたのか
公表された工程表は、発電・輸送・住宅暖房・産業の各分野で、化石燃料から電力や水素などへの転換を段階的に進める内容となっている。ドイツの電力に占める再生可能エネルギーの比率は2025年に約55%だったが、2030年までに少なくとも80%に引き上げることを目指す。石炭火力発電所は2025年時点でドイツの発電量の4分の1近くを占めていた。2038年までにすべて閉鎖するとの目標が2020年からすでに法律で定められており、今回の工程表ではこの期限を2035年に前倒しする可能性も検討するとしている。
国から資金支援を受ける新設のガス火力発電所には、水素対応(将来は水素などの燃料に切り替えられる設計)とすることと、2045年までに気候中立な燃料で稼働させることを義務付ける。工程表は具体的な燃料を示していないが、気候中立な燃料とは一般にバイオ燃料やグリーン水素(再生可能エネルギーの電気でつくる水素)などを指すとされる。
輸送分野では、低中所得世帯の電気自動車購入を後押しするため28億ユーロを充てる方針で、政府の見通しでは2035年には新車販売のすべてが電気自動車になるとされる。住宅では、新たにガス・石油暖房を設置した場合、2029年から気候中立な燃料を一定割合使う必要があり、その割合は2040年に60%まで上がる。燃料供給業者に2045年までに気候中立な暖房用燃料への全面的な切り替えを義務付ける案も盛り込まれた。産業分野では電化と水素利用、省エネを進めるとともに、排出を避けにくい工程では二酸化炭素を回収する技術を使うとしている。
環境相カルステン・シュナイダー氏は国連の気候サミットで、この計画によってドイツは化石燃料の輸入を減らし、「地政学的危機の影響を受けやすいサプライチェーン」への依存度を下げられると述べ、他国にも同様の取り組みを呼びかけた。ドイツは2024年、化石燃料の輸入に約760億ユーロを支出しており、その約3分の2が石油・石油製品、残りが天然ガスと石炭だったという。
反応は割れている。元ドイツ気候特使のジェニファー・モーガン氏は歓迎する立場を示したうえで、より速く、より計画的で公正な脱却と再生可能エネルギーの電化拡大が必要だと述べた。環境保護団体オイル・チェンジ・インターナショナル(Oil Change International)のローリー・ファンデアブルグ氏は、ドイツが工程表を公表したこと自体は評価しつつ、「危機の現実にも、豊かな歴史的排出国としての責任にも見合っていない」と指摘した。
背景
国連の気候変動会議(COP30)は2025年にブラジル・ベレンで開かれ、約80カ国が化石燃料からの移行に関する世界共通の工程表づくりを主導したが、採択には至らなかった。その後、フランスとオランダが独自に国別の工程表を策定し、ドイツが続いた。
グテーレス事務総長は国連総会で、各国に対し労働者や地域社会への配慮を伴う明確な期限つきの工程表の提出を求めた。
ドイツはロシアによるウクライナ侵攻を機に天然ガスの供給不安に直面した経緯がある。化石燃料からの脱却をエネルギー安全保障の課題として位置づける姿勢は、こうした経験を踏まえたものとみられる。石炭火力の2038年廃止という期限は2020年の法律ですでに定められており、今回の前倒し検討はその枠組みの上に立つものといえる。
日本にとっての意味
シュナイダー環境相は、この工程表は気候政策であると同時に経済政策でもあり、化石燃料の輸入に使ってきた資金が国内の価値創出に回るようになると説明した。日本もほぼすべての化石燃料を輸入に頼り、特に天然ガスは液化天然ガス(LNG)として調達している。輸入額の多寡がエネルギー安全保障と直結する構図はドイツと共通するとみられる。
ドイツは石炭火力の廃止期限をすでに法律で定めているのに対し、日本は同様の法定期限を持たないとみられ、脱炭素化の進め方の違いが今後の議論の論点になりうる。また、ドイツで電気自動車やヒートポンプへの転換が加速すれば、欧州市場向けに製品を供給する日本の輸出企業にも影響が及ぶ可能性がある。水素の利用拡大が明記されたことは、水素技術の開発を進める日本にとって協力の余地を示すものともみられる。