気候・災害

世界の3分の1近くの国、早期警報システムなお未整備 国連

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国連は、あらゆる災害に対応する早期警報システム(マルチハザード早期警報システム、multi-hazard early warning system、地震や台風、洪水など複数の災害種別に対応する警報の仕組み)を整備している国が、2022年の目標開始時の113カ国から136カ国に増えたと発表した。一方で約60カ国は依然として未整備で、国連が掲げる「2027年末までに地球上のすべての人を守る」という目標の達成期限まで残り約15カ月となっている。

何が起きたのか

国連のグテーレス事務総長は現地時間23日の発表で、取り組みには「確かな前進」があったとしつつ、「あまりに多くの人々がまだ危険にさらされている」と述べた。システムが整っていない国が集中するのは、後発開発途上国、小島嶼開発途上国、そして情勢が不安定な国や紛争の影響を受ける国々だという。これらは気候変動の影響を最も強く受けている国々にも含まれる。

国連は現在、約160カ国をこの取り組みで支援しており、31カ国が早期警報システム整備に向けた国別の行動計画(ロードマップ)を策定済みだとしている。現地時間21日にニューヨークで開かれた関連イベントでは、国連防災機関(UNDRR)のヒュー・ベイノン氏が、このシステムが2025年のケニアの洪水や、マダガスカルを襲った最近のサイクロンの際に役立った例を紹介した。国際赤十字・赤新月社連盟(IFRC)のジャガン・チャパゲイン氏も、より多くの人に警報が届くようになったことを「祝うべき成果」と評価する声明を出した。

背景

ただし国連側も認めるように、システムが「ある」ことと、警報が実際に人の避難行動につながることは別問題だ。ベイノン氏は、警報が発信されても正しい行動に結びついていない場合があると述べた。

この課題を象徴する例として、ネパールの気候交渉官マンジート・ダカール氏は、2026年8月にネパールで起きた大規模な洪水災害を挙げた。氷河の岩塊と氷の崩落が引き金となったこの洪水では、川面から少なくとも30メートルの高さの水の壁が谷を襲い、多数の死者が出たとされる。当局は自身を含む60万人に警報の携帯電話メッセージを送ったが、ダカール氏は、メッセージは「この災害の規模を伝えていなかった」とし、「メッセージを作成するのは人間で、これほどの規模の災害はこれまで起きたことがない」と述べた。シンガポール紙ストレーツ・タイムズは、メッセージが洪水の速度や規模を伝えておらず、多くの住民にとって発信が遅すぎたと報じている。

同様の問題は2024年のスペイン・バレンシアの洪水でも起きており、浸水が始まってから届いた警報メッセージには、上の階に移動する、車を運転しないといった具体的な行動指示が欠けていた。多くの住民が自家用車の中や集合住宅の地下駐車場で命を落としたと、公式報告は伝えている。

国連開発計画(UNDP)のロヒニ・コーリ氏は、途上国では降雨量や河川水位、土壌水分、住宅や送電線の位置といった基礎データを集める観測体制そのものが不足していると指摘した。国連が観測体制の強化を支援する資金枠組み(Systematic Observations Financing Facility、SOFF)がこの穴を埋めようとしているという。加えて、警報を受けて実際に動くのは国よりも地方自治体の責任であることが多く、その対応能力も課題だとコーリ氏は述べた。

資金面でも、国連の適応ギャップ報告書によれば、途上国が気候変動への適応に必要とする資金は2035年までに年間3000億ドルを大きく超える見通しだが、実際に得られている資金はその10分の1に満たない。世界気象機関(WMO)は2022年時点で、この早期警報システム普及目標の達成に必要な総額を15億ドルと見積もっていた。

日本にとっての意味

日本には緊急地震速報や特別警報といった早期警報の仕組みがある。今回の報告が示すのは、警報システムを持つ国の数が増えても、それが実際の避難行動に結びつかなければ被害を防げないという事実だ。バレンシアの洪水で多くの犠牲者が自家用車や地下駐車場で出た経緯は、大雨時に車で避難することや地下空間にとどまることの危険性を、日本の防災の文脈でも改めて考えさせる。

また、ネパールで多数の死者を出した氷河の岩塊と氷の崩落による洪水のような、これまで想定されてこなかった規模の災害に、警報の文言や発信のタイミングがどう追いつくかという課題は、数十年に一度の現象に対して出される日本の特別警報の運用を考えるうえでも示唆がある。観測データの不足や地方の対応能力という論点は、気象庁やJICAを通じてアジア太平洋地域の観測網整備を支援してきた日本の防災協力のあり方にも関わる。海外に渡航する日本人にとっても、訪問先の警報システムの実効性を知っておくことは、災害への備えの一つになる。