感染症・健康

コロナ感染後に持病が悪化、喘息など呼吸器で目立つ 米調査

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米国で実施された追跡調査で、新型コロナウイルス感染後に持病や既往の健康上の問題が悪化したと答えた人が一定数いることが分かった。悪化した内容を見ると、喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)といった呼吸器の問題が目立った。こうした持病の悪化は、これまでの後遺症研究では焦点になりにくかったとCIDRAPは伝えている。

何が起きたのか

医学系サイトCIDRAPが報じたところによると、この調査はプレプリント(preprint、査読前の論文)サーバーmedRxivに掲載された。対象は米国のアリゾナ州、インディアナ州、ニューヨーク市ブロンクス区、フィラデルフィア北部・北東部に住む成人2,227人で、2023年7月から2025年1月にかけて、新型コロナ感染後3カ月・6カ月・12カ月の時点で健康状態を尋ねる調査に回答した。回答者の約94%は感染前から何らかの持病を抱えていた。

このうち263人、全体の11.8%がコロナ感染によって持病や健康上の問題が悪化したと回答した。この263人が自由記述で説明した内容を分析すると、約32%が喘息やCOPD、咳、息切れといった呼吸器関連の悪化を挙げていた。次いで多かったのは倦怠感や頭痛、脱毛、悪寒などをまとめた分類で約20%、筋骨格系の痛みが約15%、不安や抑うつの悪化が約12%だった。糖尿病や甲状腺の問題の悪化を挙げた人はごく少数だった。

研究チームは、持病とコロナ後遺症が重なることで、症状の管理や医療機関へのかかり方、仕事や社会生活への参加に特有の課題が生じると述べている。感染や再感染が続く以上、悪化した症状の長期的な経過を追い続ける必要があるとも結論づけている。ただしこの調査はまだ査読を受けておらず、回答も本人の自己申告に基づく点には留意が必要である。

背景

コロナ後遺症は、感染後に新しく現れた症状として語られることが多い。これまでの研究の大半も、この「新規に出た症状」に焦点を当ててきたとCIDRAPは指摘している。今回の調査は、後遺症のもう一つの側面である「もともとあった持病の悪化」に目を向けた点が特徴といえる。

持病の悪化が後遺症の議論から抜け落ちやすいのは、悪化した症状が喘息やCOPDといった既存の病名のもとで扱われ、コロナ後遺症という枠組みでは数えられにくいためとみられる。感染をきっかけに気道の炎症が強まったり、体力低下が基礎疾患の管理を難しくしたりする経路が考えられるが、詳しい機序については、まだ研究が進んでいる段階とみられる。

日本にとっての意味

厚生労働省の「診療の手引き 別冊 罹患後症状のマネジメント 第3.1版」(2025年2月発行、2026年9月時点で最新版)は、罹患後症状をWHOの定義に沿って「他の疾患による症状として説明がつかないもの」と定め、「罹患後症状は除外診断であることに留意することが重要である」と明記している。除外診断とは、ほかの病気で説明がつく分を除いたうえで残る症状だけを指す考え方とされる。この定義に沿えば、持病の悪化として説明がつく分は、定義上は罹患後症状の外側に置かれるとも読める。

ところが同じ手引きの呼吸器の章は、呼吸困難感の原因の一つに「基礎疾患の悪化」を挙げ、喘息やCOPDがあると軽症・中等症でも罹患後症状が増えるとの報告が多いと記している。悪化の約3割が呼吸器関連だったという今回の米国調査の結果と、この記載は同じ方向を指している。診療の現場では注意すべき事象として書かれていても、除外診断という定義の性質上、罹患後症状という名前の統計には数えられにくいとみられる。