アマゾン森林減少、ルーラ政権下で半減 分析が示す規制強化の効果
英気候専門メディアCarbon Briefの分析によると、ブラジルのルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルバ大統領は就任以降、少なくとも2万平方キロメートルのアマゾン熱帯雨林の消失を防いだとみられる。スロベニアやウェールズに匹敵する広さだという。
世界のアマゾン熱帯雨林の約6割を抱えるブラジルでは、極右のジャイール・ボルソナロ前大統領の在任中に森林減少が急増した。2022年の大統領選でルーラ氏がボルソナロ氏を破って以降、ルーラ政権は森林保護を優先する政策に転じ、森林減少は大幅に減った。2026年10月4日(現地時間)に第1回投票が行われる大統領選では、ルーラ氏と、ボルソナロ氏の息子フラヴィオ・ボルソナロ氏が支持率で並んでおり、選挙結果は今後の環境政策の方向を大きく左右するとみられている。
何が起きたのか
Carbon Briefの分析は、ブラジルの主要法制である森林法(forest code、地主に森林の保全・回復を義務づける法律)が執行されなかった場合を想定した研究チームの試算と、実際の森林減少データを比べたものだ。この「法律が執行されない」シナリオを、ボルソナロ氏の統治の代理指標として用いている。
実際のデータでは、INPE(ブラジル国立宇宙研究所)のPRODES統計(8月から翌7月を1年とする集計)に基づき、年間の森林減少面積は2022年の11,594平方キロメートルから2025年の5,731平方キロメートルへと半分以下になった。2026年分はまだ確定していないが、速報の衛星警報(DETERデータ)では2,874平方キロメートルにとどまっている。DETERはPRODESより低く出る傾向があるため、最終値はこれより増える見込みだ。それでも専門家は、1988年の記録開始以来最も低い水準になる可能性があるとみている。
ルーラ氏は就任後、ボルソナロ政権が進めた規制緩和を撤回し、森林減少対策の行動計画を再開させた。環境相マリナ・シルバ氏の下で、環境省はアマゾンでの取り締まりと監視を強化した。この試算を主導したオックスフォード大学の研究者は、政権交代後に減少ペースが逆転したことについて「政治的な意志があれば森林減少がいかに速く反応するかを示している」と述べている。
背景
ボルソナロ政権下では、規制緩和と連邦機関の予算削減が進み、違法な森林伐採や採掘が広がりやすい環境が生まれたとされる。研究チームは今回の試算について、需要の伸びが緩やかだった点などを踏まえた比較的抑えめな見積もりだとしており、統治の弱さに乗じた違法な森林伐採の拡大までは捉えきれていないという。ブラジルの環境団体・気候オブザーバトリーのクラウディオ・アンジェロ氏は、ボルソナロ氏が実際に再選されていれば、これより森林減少が大きくなっていた可能性があると指摘する。
森林法自体は撤廃されずに残ったが、執行の強度が政権によって大きく変わった。つまり、規則の有無ではなく、それをどれだけ実効的に取り締まるかが森林減少の水準を左右してきたことになる。ルーラ政権下でも減少ペースは就任直後から急に落ちたわけではなく、法の順守を回復させていく過程は段階的だったと研究者は説明している。
日本にとっての意味
ブラジルの森林減少と日本の制度が直接つながるわけではない。今回の試算でも、森林減少の水準を左右する要素として挙げられているのはブラジル産の牛肉や大豆の需要の伸びで、木材と木材製品を対象とする日本のクリーンウッド法が届く範囲ではない。重なるのは、規則そのものよりも執行の強度が結果を決めるという点に限られる。
2017年施行の旧クリーンウッド法は、事業者の登録を任意としていた。登録した事業者が扱う木材のうち、合法性が確認された割合は2022年度時点で第1種98%、第2種92%と高かった。
ただし、登録事業者が合法性を確認した木材の量は、国内の総需要量の4割程度にとどまっていた。任意の制度は、参加した事業者の中では機能しても、それ以外の量には届かなかったということになる。
2025年4月に施行された改正法は、木材を最初に国内に持ち込む第1種事業者に合法性の確認や記録の保存を義務として課している。規則があること自体ではなく、それをどれだけ確認し取り締まるかが効くという点で、ブラジルの経緯と通じる面がある。