土を3Dプリントした円筒の建物、国境の壁を貫くシーソー ラエル・サン・フラテロの回顧展がサンフランシスコで開幕
米カリフォルニア州オークランドのデザインスタジオ、ラエル・サン・フラテロの中間回顧展「プロトタイプとプロヴォケーション」が、サンフランシスコ中心部のイエルバ・ブエナ芸術センターで現地の9月25日に始まった。スタジオは2002年に、ロナルド・ラエル氏とバージニア・サン・フラテロ氏が設立した。素材の探求と3Dプリントの実験的な使い方、社会や政治の問題への関与で知られる。同センターは、これまでで最も包括的な紹介だとしている。会期は2027年1月31日まで。
何が起きたのか
展示の中心は「サンクチュアリ」である。土とわらと水を混ぜた材料を、会場でそのまま3Dプリントして積み上げた円筒形の建物で、来場者は周りを歩き、中にも入れる。上には鏡のような膨らませた球体が載る。土の壁には、2011年に破産した地元の太陽光パネルメーカー、ソリンドラから引き取ったガラスの棒が刺さっている。スタジオは、生の土は1万年にわたって人を守ってきたと述べ、古い素材と新しい素材を組み合わせる難しさを、この棒が示しているという。
センターの依頼でつくった「ワークショップ」は、ソウルの展覧会から調達したほうきの穂で屋根をふいた小屋である。波打つ外壁は、植物由来で生分解性のPLA樹脂の糸と小さなプランターで覆った。机の上には、コーヒーかすやシャルドネのブドウの皮、カリフォルニアの山火事の灰を材料に3Dプリントした作品が並ぶ。
代表作の「ティーター・トッター・ウォール」も出品された。2019年、米国とメキシコの国境の壁のすき間に鮮やかなピンクのシーソーを通し、両側の人が一緒に遊べるようにした作品である。ほかに、膨らませると仮の避難所になるタイベック製のコートや、駆け寄る両親と子どもの影を描き、抗議活動で誰でも使えるようダウンロードできる形で公開したポスター「リユナイト」も並ぶ。
背景
キュレーターのルネ・モラレス氏は、建築と社会的な実践、伝統と技術、詩と運動の境界をあいまいにしながら、よりよい世界を描き、いつか自分たちの手でそれを建てるための道具をつくろうとしていると評した。スタジオはこれまでも、土を3Dプリントした建物の連作「マッド・フロンティアーズ」などを手がけてきた。
日本にとっての意味
3Dプリンターで建物をつくる試みは、日本では土ではなくセメント系の材料で進んできた。大林組は2023年3月、東京都清瀬市の技術研究所に実証棟「3dpod」を完成させた。同社によると、セメント系材料を使った3Dプリンターによる建築物として、国内で初めて建築基準法に基づく国土交通大臣の認定を取った構造形式である。壁はすべて現地で直接プリントした。鉄筋を使わない3Dプリンター用の特殊なモルタルで壁の層をつくり、そこに大林組の超高強度繊維補強コンクリートを流し込んで構造体とした。
サンクチュアリも、会場で材料を積み上げる点は同じである。違うのは材料である。日本で3Dプリントの建物が初めて大臣認定を得たのはセメント系の材料だった。ラエル・サン・フラテロは、同じ3Dプリントの手法で人類最古の建材である土を積み、倒産した会社の廃材を組み合わせた。