白色矮星に惑星候補 ハッブルが見つけた死んだ星の生まれ変わり
NASAのハッブル宇宙望遠鏡が1999年に観測した白色矮星『HS 0209+0832』のデータから、死んだ星の残骸から生まれた「第二世代」の惑星が存在する可能性を示す証拠が見つかった。研究チームは、長年正体不明だった約100個の吸収線の多くが、ニオブという重元素によるものだと突き止めた。この成果は現地時間10月5日、学術誌ネイチャー・アストロノミーに発表された。
何が起きたのか
ハッブルは1999年、白色矮星HS 0209+0832を観測した際、どの元素にも当てはまらない約100個の未知の吸収線を記録していた。研究チームは更新された原子データベースを使ってこの古いスペクトルを読み直し、未知の線の多くがニオブという重元素の吸収線と一致することを発見した。ニオブは地球上では装飾品や医療用画像機器にも使われる金属だが、白色矮星で検出された例はこれまで報告されていなかったという。
この結果は、NASAの退役済み観測衛星FUSEが残していたデータでも確認され、ニオブの強い兆候が裏付けられた。さらにNASAの系外惑星探索衛星TESSが約4か月間この星を観測したところ、周期的な明るさの変化が見つかり、約600万キロメートル離れた軌道を回る惑星の存在を示唆した。研究チームの推定では、この惑星候補は木星ほどの大きさのガス惑星で、白色矮星の強い放射によって大気を急速に失っている。尾のように流れ出した物質が星の周りの円盤となって表面に降り積もることで、ニオブとして観測された可能性がある。
背景
白色矮星とは、太陽程度の質量をもつ星が核融合の燃料を使い果たし、外層のガスを宇宙空間に放出したあとに残る、高温で高密度の星の中心核のことだ。地球を含む太陽系の惑星は、星が生まれる際に残った物質から作られた「第一世代」にあたる。これに対し、白色矮星になったあとに放出された物質から新たに作られる惑星は「第二世代惑星(second-generation planet)」と呼ばれ、これまで観測例がほとんどない珍しい天体とされる。
鉄より重い元素は、通常の星の内部で起きる核融合では作られないと考えられており、ニオブのような重元素は、星が死に至る過程で一時的に生じる特殊な条件下でしか合成されないという指摘がある。研究チームは、検出されたニオブを、こうした「死」の過程で星の内部物質が宇宙に放出された痕跡だとみている。また重元素は白色矮星の表面に長くとどまらず沈み込んでいくとされており、観測された豊富なニオブは、何らかの形で継続的に供給されている可能性を示すと考えられる。
日本にとっての意味
この研究の核心は、望遠鏡の精度そのものではなく、観測データをどの原子データで読み解くかが結論を左右した点にある。日本のX線天文学でも同じ構図が見られる。JAXAの衛星「ひとみ」がペルセウス座銀河団を観測したスペクトルでは、同じデータをAPECとSPEXという二つの原子データベースのどちらで解析するかだけで、鉄の量の推定値が16%、統計誤差の17倍も変わってしまうことが分かった。論文は、原子データベースの大幅な更新と実験室での精密測定が欠かせないと結論づけている。
別の研究では、JAXAがNASAなどと開発したX線分光撮像衛星XRISM(クリズム)が、ケンタウルス座X-3という天体を観測したデータを再解析したところ、先行研究が中性の鉄だと仮定していた輝線が、実際には電子を5個ほど失った鉄イオンによるものだと判明した。この補正によって可視光観測との速度のずれが解消された。装置の性能が原子データの精度を追い越した今、観測結果を正しく読み解けるかどうかは、どの原子データを使うかにかかっている。