菌糸の防火服、藻とカキ殻のブロック メルボルンのNGV、植物素材のデザイン60点超を展示
オーストラリア・メルボルンのビクトリア国立美術館(NGV)で、展覧会「Plant Life: The Nature of Design(植物の命:デザインの本質)」が開かれている。家具から建築、映像まで60点以上を通じて、植物由来の素材が再生できない素材の代わりになりうることを示し、世界各地の先住民が自然とどう関わってきたかにも光を当てる。会場は同館のイアン・ポッター・センターで、会期は2026年8月28日から2027年2月7日まで。
何が起きたのか
展示台や展示面そのものも、地元でつくられた新しい素材でできている。ヘンプ(麻)の板「Plantbord」で、デザイナーのヨースト・バッカー氏と建材会社フォレスト・ワンが開発した。固めるのに使ったバイオ樹脂「Plantics」は、学芸員によれば、世界で初めての100%植物由来の熱硬化性樹脂だという。
オランダのデザイナー、ヨリス・ラーマン氏の椅子「Ply Loop Chair」も、このPlanticsで合板を貼り合わせた。家具に広く使われる有害な尿素ホルムアルデヒド系の接着剤の代わりである。
建材では、シドニーの美術家ケイト・スカーディフィールド氏が、ニューサウスウェールズ州とクイーンズランド州の養殖業から集めた1トンを超える藻を、カキ殻の廃材と混ぜてブロックにした。RMIT大学の依頼で開発された防火ジャケットは、農業廃棄物で育てた菌糸の革でできており、開発チームによれば炎にさらされると自然に火が消える。ペルー・アマゾンのアワフンの人々と、リマのテキスタイル工房が組んだ上着もある。シリンガの木を切らずに樹液を採り、綿に塗って防水の布にした。
背景
現代デザイン・建築を担当する上級学芸員のユアン・マケオイン氏は、石油化学製品が見つかり磨き上げられるまで、人の文化のほとんどすべては植物、動物、鉱物でできていたとDezeenに語った。循環する暮らしは数千年の間どの文化でも基本だったとし、植物がふたたび主な素材の源になる未来を見ようとしているという。
メキシコのデザイナー、フェルナンド・ラポッセ氏の寝椅子は、アボカドの種とマリーゴールドで染めた布を継ぎはぎして表面を覆った。継ぎはぎは、傷んだ布を継ぎ当てで直す日本の「ボロ」に学んだという。世界最大のアボカド産地であるメキシコで、需要の急増が社会と環境の危機を招いていることを伝える狙いがある。
日本にとっての意味
ラポッセ氏が参考にしたボロは、日本では襤褸(らんる)とも書く。文化庁の文化遺産オンラインは、昭和の初めまで庶民の暮らしで布はとても貴重で、どんな小さな切れ端も寄せ集めて夜具に仕立てたり、破れた仕事着の継ぎ当てにしたりしたと説明している。物を大切にする精神を示すものとして、近年は海外からも注目されているという。
その姿をまとまって伝えるのが、1983年に国の重要有形民俗文化財に指定された「津軽・南部のさしこ着物」786点である。青森県によれば、衣料が乏しかった津軽と南部では、麻糸で織った布で衣類を仕立て、切れやすいところを糸で刺して補強した。江戸時代の末ごろから木綿の古布が入ってくると、木綿の布を当てて一面に刺した。
マケオイン氏が言う石油化学以前の暮らしは、日本の農村の仕事着にも残っている。麻と木綿という植物の布を、ほころびるたびに刺し、継いで使い続けた。素材を植物に替えるだけでなく、使い切るまで直す技も、日本にはすでにある。