マレーシア、2026年1月以降にミャンマー人収容者約1万人を送還と首相
マレーシアのアンワル・イブラヒム首相は現地10月6日、議会下院で、2026年1月以降、入管収容施設にいたミャンマー人およそ1万人を空路と海路で本国に送還したと明らかにした。マレーシア当局は「自発的な帰還」と説明しているが、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は内戦が続くミャンマーに安全に帰れる条件はないと懸念を表明し、国連のミャンマー担当特別報告者は送還計画の停止を求めている。
何が起きたのか
一部はミャンマー側が手配した航空便で送還された。直近では現地9月29日、ミャンマー海軍の艦艇3隻でミャンマー人1476人が送還された。これは、合わせて約5000人規模とされる送還計画の一部にあたる。アンワル首相は下院の質問時間で、ミャンマー人や難民、特にロヒンギャへの政府の対応を問われ答弁した。
送還対象者はマレーシア国内14カ所の入管施設に収容されていた人々で、身元確認と健康診断を経て送り出されたとマレーシア当局は説明している。
これに対しUNHCRは、紛争下のミャンマーには安全で持続可能な帰還の条件がそろっていないとして懸念を示した。国連のミャンマー特別報告者ケリー・カリー氏もマレーシアに計画の停止を求め、送還された人々が迫害やその他の深刻な人権侵害に直面しかねないと警告した。
背景
ミャンマーでは2021年の国軍によるクーデター以降、各地で武力衝突が続いているとみられる。マレーシアには、こうした情勢から逃れた人々や出稼ぎ労働者を含め、多くのミャンマー人が暮らしており、その中には正規の在留資格を持たないまま入管に収容される人も少なくないとされる。
マレーシアは難民条約を批准しておらず、国内法上「難民」という法的地位を正式には設けていない。
日本にとっての意味
送還先の情勢を理由に帰還を止めるかどうかを、送り出す政府自身が判断する構造は、日本にも存在する。2025年12月の参議院答弁書で政府は、ミャンマー国籍者の送還について「送還先の国内情勢等を踏まえ、送還の実施について適切に判断している」と答えている。実際の送還数は2021年17人、2022年1人、2023年8人、2024年4人と少なく、同じ答弁書は2024年の難民認定申請627人に対し認定はわずか36人だったことも示す。
紛争を理由に帰れない人の主な受け皿は、難民認定という保護の資格ではなく、出入国在留管理庁が運用する「緊急避難措置」という行政上の在留許可にとどまるとみられる。難民と認められなくても在留と就労を1年単位で認める仕組みだが、同庁は制度の誤用があるとして2024年10月に技能実習生への適用を絞っている。安全な帰還の条件があるかどうかの判断を、送り出す側に委ねる構図は、マレーシアと日本で形を変えて共通している。