気候・災害

台風の高波をマングローブ林がどれだけ減らすか、新手法で予測

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マングローブ林は根が複雑に絡み合い、波のエネルギーを吸収して海岸を高潮や高波から守る働きがあるとされる。研究チームは、穏やかな天候時に測った波のデータだけから、台風級の高波をマングローブ林がどれだけ弱めるかを予測する計算式を、台風の実測データで検証した。海岸の実務者向けに、ウェブ上で使える計算ツールも公開した。

何が起きたのか

研究チームが使ったのは「HU法」と呼ばれる式で、2025年に別の論文で発表されたものだ。波の相対的な高さと、波高・波長・水深から求める「アーセル数(Ursell number)」という指標だけを使い、個々のマングローブの密度や幹の太さ、抵抗係数まで測らなくても減衰率を見積もれるという。

研究チームは2024年8〜9月、中国南部・湛江の再生マングローブ林で波の高さを測定していた。そこへ現地時間の2024年9月上旬、台風ヤギがフィリピンから中国南部を襲った。マングローブの前面では、マングローブ林での観測としては過去最大とされる高さ約0.9メートルの波が立ったが、サッカー場の長さほどの林を通り抜けると0.36メートルまで下がっていた。

研究チームは2025年春、同じ湛江の林で改めて穏やかな天候時のデータを集め、HU法でヤギの高波の減衰をさかのぼって予測できるか試した。予測値は実際の観測結果と「よく一致する」ことが分かった、と2026年8月にオンライン公開された論文は報告している。観測期間を通じ、この林は波の高さを44〜70%減らしていた。

背景

マングローブが波を弱める働き自体は以前から知られていたが、そのデータの多くは穏やかな天候の下で集められたものだった。台風のような嵐の最中は乱流が強く、波の動きを左右する要因が増えるため、データの収集も予測も難しいとされてきた。

気候変動は激しい気象現象と結びついており、2025年には気候関連の災害で8700万人以上が影響を受けたとされる。沿岸の自然林を防災の仕組みとして数値化できれば、被害が出る前に対策を講じる手がかりになるとみて、研究チームは今回の手法を開発したという。

日本にとっての意味

今回の研究は、穏やかな天候時の波のデータから嵐の時の減衰を見積もる手法と、世界のどこでも使えるオンラインの計算ツールを示し、生態系の再生や海岸工学に役立つとしている。日本でも、堤防と一体になった樹林を海岸保全施設として位置付ける仕組みがすでにある。林野庁の検討会が2012年2月にまとめた報告書は、一定条件のシミュレーションにより、「林帯幅50m程度以上」で津波の流体力を半分以下に抑えられるとの知見を示している。

ただし林野庁が2026年3月付で公表した委託調査によると、回答のあった民有林の海岸防災林760件の集計で、平均の林帯幅は50m以下が最も多く、約7割が100m以下にとどまり、200mを超えるのは約1割にすぎない。幅を効果の数字に結び付ける枠組みができても、その幅を実際の海岸でどこまで確保できているかという別の課題が残っている。