大西洋で今季初のハリケーンに発達の見通し 米湾岸へ、121年前の「最も遅い記録」に並ぶか
メキシコ湾岸に向かうトロピカルストーム「アイサイアス」が、大西洋で今シーズン初のハリケーンに発達する見通しとなっている。実際に発達すれば、季節最初のハリケーン発生としては最も遅い1905年の記録に、121年ぶりに並ぶか、それを更新することになる。米国フロリダ州とアラバマ州では、上陸前から非常事態宣言や大規模イベントの中止が決まった。
何が起きたのか
アイサイアスは現地時間7日(水)、メキシコ東部沖の暖かい海域でトロピカルストームとして発生した。米海洋大気庁(NOAA)のハリケーンセンターによると、7日時点でメキシコのプログレソの北西約420キロ(260マイル)、ミシシッピ川河口の南西約870キロに位置し、最大持続風速は時速75キロで、東北東へ時速13キロで進んでいた。
予報では、アイサイアスは現地時間8日(木)までにハリケーンへ発達しながら北へ向きを変え、現地時間9日(金)夜から10日(土)早朝にかけて米国湾岸に上陸するとみられている。
ハリケーンセンターは現地時間7日、ミシシッピ州ベイセントルイスからフロリダ州パンハンドルのインディアンパスまでの北部湾岸に「ハリケーン警戒情報(hurricane watch)」を出した。これは48時間以内にハリケーンの条件が発生する可能性があることを示すものだ。同センターは、強風や高潮、鉄砲水を招く大雨への備えを呼びかけた。雨量は湾岸沿いで8〜15センチ、多い地域で25センチに達すると見込まれている。
アラバマ州ガルフショアーズでは現地時間8日から週末にかけて予定されていた「全米エビ祭り(National Shrimp Festival)」が中止になった。前年は推定32万5千人が訪れた祭りで、主催者側は来場者や出店者、ボランティアの安全を最優先した判断だと説明した。フロリダ州のデサンティス知事はパンハンドルとビッグベンド地域の25郡に非常事態を宣言し、ハリケーン対応の州計画を発動できる体制を整えた。
背景
大西洋のハリケーンシーズンは例年6月から11月とされ、最初のハリケーンは夏の盛りに発生することが多い。今年はその発生が異例に遅れており、Mongabay は強いエルニーニョ(El Niño、太平洋の海水温が上昇する現象)が大西洋での嵐の形成を妨げてきたためだと伝えている。エルニーニョの年は大西洋上空の風の状態が乱れやすく、ハリケーンのもとになる熱帯の雲の塊がまとまりにくくなるとされる。一方で Mongabay によれば、同じ時期の太平洋では平年より活発な嵐の活動が続いている。
こうした中で大西洋の今季初のハリケーンが発生すれば、1905年10月8日に記録された「季節最初のハリケーンとしては最も遅い」という121年前の記録に並ぶか、それを超える可能性がある。今回の報道はこの点を核にしている。
日本にとっての意味
今回、米国の自治体や祭りの主催者は、上陸前の段階で、非常事態宣言の発動や32万人規模の祭りの中止を決めた。上陸しなくても戻らない費用や損失を、先に確定させた判断である。日本にも、災害が発生する前に公費で費用を払う仕組みが災害救助法にある。
2021年5月の災害対策基本法等改正により、国が災害対策本部を設置してその所管区域となれば、都道府県知事等が「災害が発生するおそれがある段階」で同法を適用できるようになった。初めての発動は2022年の台風14号で、政府は9月17日15時に特定災害対策本部を設置し、9県全286市町村に適用された。
この段階で国庫負担がつくのは避難所・福祉避難所の供与と要配慮者の輸送に限られ、救助期間は救助を開始した日から、救助を終了する旨を公示した日までとされている。空振りでも費用を払う仕組みが、条文の運用基準にそのまま組み込まれている。