駐ギリシャ米大使、承認公聴会前に献金者へ10万ドル送金を求めたと米紙報道
駐ギリシャ米大使のキンバリー・ギルフォイル氏が、上院の承認公聴会を控えた時期に、トランプ氏への献金者だった人物に10万ドルを自分のアメリカン・エキスプレス(Amex)のカード口座へ送金するよう求めていたと、米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が米国時間10月7日に報じた。WSJが確認したというシグナル(Signal)上のメッセージが根拠とされる。ギルフォイル氏側の弁護士はメッセージの内容が本物かどうか争っていると述べている。
何が起きたのか
WSJによると、献金者である元連邦議会選挙候補のエリック・デターズ氏は、2020年以降ギルフォイル氏に講演料として30万ドルを支払ったと述べている。2024年の大統領選後、デターズ氏は自身への税務調査をめぐり、就任予定だったIRS長官への働きかけを頼むなど、複数の頼み事をギルフォイル氏に持ちかけたという。
2025年1月、ギルフォイル氏はメッセージのやりとりを文書に残さないようデターズ氏に求め、「大使の座を失いかねない」といった趣旨の発言をしたとされる。そして公聴会を6日後に控えた同年7月3日(現地時間)、ギルフォイル氏は10万ドルの送金先としてアメックスの口座を指定したとされる。WSJが確認したとするメッセージでは、ギルフォイル氏が「アメックスに送金すれば、どこにも表示されない」と記していたという。デターズ氏は、結婚生活に支障が出るとしてこの要求を断ったと話している。
ギルフォイル氏は現地時間7月9日の公聴会を経て上院で承認された。米大使館の担当者はWSJに対し、同氏は身元調査を完了し承認されたと説明した。上下両院の外交関係の委員会に所属する民主党議員らは、WSJの別の調査報道を踏まえ、現地時間9月30日と10月1日の書簡で、国務省に同氏の行動を調べるよう求めた。
背景
米国の大使人事は、大統領の指名を受けて上院が承認の是非を審議する仕組みで、公聴会での質疑と、本人が申告する財産・収入の開示、そして政府による身元調査が主な関門になっているとされる。
大使職が政治的な支援者や献金者に与えられることは米国で長く続く慣行だとされるが、今回の報道の当事者は献金を受け取る側であり、デターズ氏自身が大使職を得たわけではない。問題視されているのは、承認前の人物が私人から金銭を得る際に、記録に残りにくい経路を使おうとしたとされる点である。
日本にとっての意味
日本では大使・公使の任免は外務公務員法第8条により、外務大臣の申出を受けて内閣が行い、天皇が認証する。国会の議決や同意は要件になっていない。2014年の政府答弁書も、国会が任命手続に関与することには機動的な人事の観点から慎重であるべきだとしている。関門は上院公聴会のような場ではなく、内閣の任命手続と、政府が外部から起用する際の任用基準として示す条件の側にある。
その基準の一つに、就任にあたり報酬を得ている団体の役職をすべて辞することができる者という条件がある。これは就任前の肩書を審査する仕組みであり、米国の身元調査や財産開示と同じく、本人が自己申告する範囲が前提になっており、帳簿や役職として現れない私人からの金銭の動きまで洗い出す設計にはなっていないとみられる。