インド工科大マドラス校に竹でつくった音楽研究センター 「貧者の木材」を主役に11か月で完成
インドの建築事務所エカース・スタジオが、南部タミル・ナードゥ州チェンナイにあるインド工科大学(IIT)マドラス校の構内に、竹でつくった音楽の学習・研究施設を完成させた。名前は「マエストロ・イライヤラージャ音楽学習・研究センター」。インドを代表する作曲家イライヤラージャ氏にちなむ。
何が起きたのか
施設は、250ヘクタールのキャンパスに建つ竹のパビリオン群である。音楽を学ぶ学生だけでなく、工学や数学の学生も使い、主に音楽に関わる研究の場とする。授業やリハーサル、集まりにも使う。
中心は80席のホールで、高さ9メートルのアーチが柱なしで15メートルを渡す。ほかに20席の教室が2つ、50席の教室が1つ、録音スタジオや事務室がある。
主な構造材は竹で、コンクリートはできるだけ使っていない。竹は加工した集成材から束ねた細竹まで何種類も使い分け、覆わずに見せている。職人が基本的な大工道具で竹を割り、曲げ、束ね、つないだ。それを構造設計で詰め、大きな空間を持つ施設に必要な性能を満たした。仕上げには石灰や土、天然繊維の屋根材を使っている。
パビリオンの形は、ヒンドゥー教で神聖とされるベルノキの葉をもとにした。3枚に分かれたこの葉は、昔から音や動きと結びつけられてきた。ここから、屋根の下に開けた場所と囲まれた場所が交じる配置が生まれた。
背景
事務所によると、竹は何十年も「貧者の木材」と見られてきた。竹は世界中でよく育ち、早く、安く手に入るので、建築に向いていると事務所は考えている。この施設で、竹でも強さや複雑な形、柱のない大きな空間を実現できると示し、竹を建築業界の「周縁から主流へ」移したいという。工事は11か月で終わった。複雑な形でも短い期間で建てられたのは竹のおかげだと、事務所は説明している。
日本にとっての意味
日本でも、竹は使われなくなった素材である。林野庁によると、竹材の生産量は1960年には1347万束あった。1967年以降にマダケが一斉に花を咲かせて枯れたのを機に、輸入竹材やプラスチック製品が広まって国内の生産は大きく減り、2023年は90万束だった。手入れされない竹林が増え、周りの森に竹が入り込む問題も起きている。
ただ、竹で建物の骨組みをつくるのは日本では簡単ではない。竹は建築の材料としてJISやJASの規格がないからだ。日建ハウジングシステムは鹿児島県薩摩川内市と組み、竹を貼り合わせた集成材で骨組みをつくる方式を開発した。この方式は2023年3月に日本建築センターの性能評価書を受けた。同社によると、竹集成材の構造で評価書を得たのは国内で初めてである。申請から約2年かかったという。実際に建てるには、建物ごとに国土交通大臣の認定も受ける必要がある。