豪州の名勝「十二使徒」に土の壁のビジターセンター 大勢を流すより「ゆっくり見る」場へ
オーストラリア南東部ビクトリア州の海岸に並ぶ岩の柱「十二使徒」に、新しいビジターセンターができた。建築事務所グリムショーとランドスケープ設計のアスペクト・スタジオが手がけ、延床面積は3300平方メートル。土を突き固めた版築の壁で、建物そのものより地形の一部に見えるよう設計した。州政府によると、現地時間10月16日に開館する。
何が起きたのか
センターはポート・キャンベル国立公園の、名所を見下ろす高台にある。海側の「コースタル棟」と内陸側の「ヒンターランド棟」の2棟がつながり、それぞれ海と内陸に向かって腕を広げるように延びる。内陸側にはカフェと売店、海側には展示と眺望の空間が入り、屋上が海を見渡す展望台になっている。展望台へは緩やかに上る小道を通り、途中の休憩所で高さごとに違う眺めを楽しめる。内装には版築の壁と合板を使った。
グリムショーは、この順路の狙いを、大量の来訪者をさばくだけの場から、土地とゆっくり向き合う体験へ変えることだと説明する。駐車場と進入路は観光バスと自家用車を分けて造り直した。歩行者は駐車場から「ウェルカム・ガーデン」とセンターを通って、岩の柱や周りの海岸へ向かう。
背景
一帯は先住民イースタン・マール民族の土地「キーレイ・ウールーン」である。州政府によると、この名は土地の名であり、彼らの言語の名でもある。センターは同民族の非営利団体イースタン・マール・アボリジナル・コーポレーションと共同で設計し、建物の大きさと位置も一緒に決めた。屋外の催しや出迎えに使うウェルカム・ガーデンは同民族の文化遺産をたたえる場で、周りには海岸の低木や草原、林を植えた。センターの名前にもキーレイ・ウールーンを使った。
州政府によると、十二使徒とグレート・オーシャン・ロードには年に700万人が訪れる。事業費は1億2600万豪ドルで、連邦政府が8800万豪ドル、州政府が3800万豪ドルを出した。
日本にとっての意味
十二使徒では、訪れる前の予約が必要になり、駐車場の確保も予約で行う。2027年4月までは無料だが、その後は入場料を取り、収入はすべて海岸と公園の保護や改善に充てるとしている。イースタン・マールの人々と地元住民は払わなくてよいとしている。
日本で同じように、名所に入る人を予約と料金で絞る例が富士山である。山梨県は吉田ルートの五合目登山道入口にゲートを設け、2026年の夏山シーズンは1人1回4000円の通行料を事前に払う仕組みにした。午後2時から翌日午前3時まではゲートを閉め、1日の登山者が4000人に達すると、予約のない人は通れない。
十二使徒は、その入り口に、人を急がせず景色の中で立ち止まらせる建物を置いた。人数を絞るだけでなく、訪れた人の過ごし方まで設計し直した例になる。