商用月着陸機グリフィン1号、NASA施設で環境試験完了
アメリカの企業ヴォイジャー・テクノロジーズが開発した月着陸機「グリフィン・ミッション・ワン」(グリフィン1号)が、NASAのジェット推進研究所(JPL)で一連の環境試験を終えた。2026年中にSpaceXのファルコン・ヘビーで打ち上げられ、月の南極付近にあるノビレ・クレーターへ物資を届ける計画で、今回の試験は打ち上げと月面到達に向けた機体の耐久性を確かめるものだった。
何が起きたのか
打ち上げ時の衝撃を再現する振動試験では「シェーカーテーブル」で3方向に機体を揺らし、音響試験では窒素ガスを使った大型ホーンで最大153デシベルの音を浴びせた。真空の宇宙環境を模す熱真空試験では、高さ26メートル(85フィート)のチャンバー内で約2週間、75℃の高温と−100℃の低温を交互に加えた。さらに機体の重量バランスを測る試験や、電波暗室での電磁干渉試験も行った。
重さ1,265キログラム(2,789ポンド)の機体には、6カ国の科学・技術実証機器10件が搭載される。その中には、月に運ばれる商業ペイロードとしては過去最大となるアストロラブ社のローバーも含まれる。試験を終えた機体はヴォイジャー・ルナ・システムズの工場に戻り、最終組み立てを経てケープカナベラルへ送られる。
背景
グリフィン1号のミッションは、NASAが月面基地(Moon Base)計画の一環として進める商業月面輸送サービス(CLPS)に基づく。NASAが着陸機を自前で持たず、民間企業から輸送サービスを買う仕組みで、企業側にとっては高価な試験設備を自社で揃える負担が大きいとみられる。そこでJPLが貸し出したのが、アメリカ国家歴史登録財にも指定されている設備だ。JPLの担当者は「レンジャー計画が1960年代半ばにNASAにとって初の月面の近接画像をもたらした頃から、環境試験研究所は探査機を試験してきた」と述べている。
日本にとっての意味
日本でも、国の試験設備が民間の月着陸機を検証するという同じ構図が見られる。ispaceは2025年4月からJAXA筑波宇宙センターで、開発中のシリーズ3ランダー(仮称)の熱構造モデル(STM、実機ではなく試験用の模型)を使い、振動・音響・熱真空の3種類の試験を実施した。直径13メートルの大型チャンバーも使い、太陽光下約130℃、影で−140℃という温度環境への耐性を検証している。
ただしJPLが自前の設備で試験を行うのに対し、JAXAは2020年6月、筑波の18の環境試験設備と10棟の建屋を使う「環境試験設備等の運営・利用拡大事業」を官民連携で始め、設備の運用・保守はエイ・イー・エス社が担っている。官民連携による設備の運営・利用拡大事業はJAXA初の取り組みだ。