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中米の古代遺物を密輸したLAの画商、画廊記録から手口が明らかに

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20世紀半ばのロサンゼルスで、ハリウッドの大女優から有力美術館までを顧客にした画商が、中米の古代遺物を違法に掘り出し密輸したうえで「収集に値する美術品」として売っていたことが、新しい研究書によって明らかになった。画商の名はアール・ステンダール。

何が起きたのか

写真家マン・レイが1940年に撮った1枚の写真には、アカデミー賞女優のテレサ・ライトが、チャックモール像と呼ばれる古代の石像に寄り添う姿が写っている。首を見る者の方へねじるように横たわるこの像は、ハリウッドのスターだけでなく、中米の植民地以前の美術に関心を持つ収集家や美術館にも新鮮な驚きを与えた。

こうした需要を支えたのが、ステンダール・アート・ギャラリーズだった。ゲティ研究所が刊行した新著『Artifacts to Art: Collecting Ancient America in Midcentury L.A.』(2026年、アンドリュー・D・ターナー、メアリー・E・ミラー、クリスターン・D・ビレラ著)によれば、同画廊は、メキシコ各地の盗掘者から遺物を調達し、ロサンゼルスの顧客に違法に流す主要な経路になっていた。

この時代の市場を象徴する例が、ミネアポリス美術館が1947年に1万ドルで購入した「キング・チャックモール」だ。この像は1958年から1960年にかけて欧州を巡る展覧会にも出品され、同館の看板的な収蔵品になった。ところが、その約10年後、専門家の調査によって偽作だったことが判明した。

ゲティ研究所は現在、ステンダール画廊のアーカイブを所蔵している。研究チームはこの記録を手がかりに、国際的に名の知れた美術館、ハリウッドの俳優、メキシコ各地の盗掘者という、一見つながりのない関係者たちがどのように結びついて市場を作っていったかを、時系列を追わない構成で描き出している。

背景

中米の古代遺物が「美術品」として取引されるようになった背景には、先コロンブス期の遺物の位置づけが変わったことがある。もともとこうした遺物は、考古学・人類学の調査対象として学術的に扱われるものだった。それが20世紀半ば、画商や収集家の手によって「収集し、鑑賞する美術品」という新しい枠組みに置き換えられていったとみられる。

この分類の転換は、遺物の商業的な価値を一気に高めた。学術調査の対象であれば出土地や発掘経緯の記録が重視されるが、美術品として売買されれば、作品としての見栄えや珍しさが優先され、出どころの不明さはむしろ背景に退く。

日本にとっての意味

日本も海外からの流出文化財の行き先となってきたが、法律で取り戻せる範囲は狭い。「文化財の不法な輸出入等の規制等に関する法律」が回復請求を認めるのは、外国の博物館等の「施設」の所蔵品目録に載っていたことが証明され、外交経路で通知された物件に限られる。しかも、2002年12月9日の施行前に盗まれたものは対象外とされる。ステンダールが扱ったような、遺跡から密かに掘り出され目録に載ったことのない遺物は、そもそもこの仕組みの外にある。

実際に日本でアフガニスタン流出文化財が扱われたのも、法律の強制ではなく、平山郁夫らが設立した委員会による自発的な保護によるものだった。2001年のバーミヤン大仏破壊後に集められた102点は、2016年8月までにアフガニスタンへ返還された。