米軍、中南米で対カルテル作戦拡大 600人派遣と報道、高官は目的に疑問
米国防総省がラテンアメリカでの対麻薬カルテル作戦を拡大している。米紙ニューヨーク・タイムズが米国時間10月14日、米軍関係者の話として報じた。一部の米高官は、政権が作戦の明確な目的を示していないと懸念しているという。
何が起きたのか
報道によると、第10山岳師団から編成された600人規模の大隊の先発部隊が、パナマのジャングル訓練施設への移動を始めた。部隊は今後コロンビアとホンジュラスでも訓練を行う。中南米政策に詳しい米団体の専門家は、侵攻や災害対応を除けば中南米でこれに近い規模の米軍派遣は記憶にないと述べた。一方、在パナマ米国大使館は、600人をパナマに送ったとの報道を「明確に誤り」と否定した。パナマにいるのは第10山岳師団の120人で、2週間のジャングル訓練課程に参加しているだけだと説明している。
同じ師団の兵士の一部は、マイアミに新設される西半球作戦司令部の要員も担う。MQ-9無人機のコロンビア・エクアドルへの移転や、ヘグセス国防長官による対カルテル専門部署の新設も進んでいる。兵士たちは10月中に、コロンビアで予定される演習サザン・バンガードにも参加する。派遣は一時的な交代勤務とされるが、常設的な駐留になる可能性があるという。米政府は中南米各国に掃討強化と共同作戦の許可を求めてきたが、正式に応じたのはコロンビアとホンジュラスなど一部にとどまる。
米軍はカリブ海と東太平洋で船舶への攻撃を71回実施し、証拠を示さないまま密売人だと主張して少なくとも239人を殺害した。南方軍司令官のフランシス・ドノバン将軍は、作戦を船舶への攻撃から陸上の標的にも広げると述べた。法律専門家は攻撃を違法だと指摘し、人権団体は陸上攻撃が民間人被害を広げる恐れがあると警告する。ある高官は、米軍への攻撃が起きれば事態が激化し、すでに負担の重い部隊が別の紛争に深く引き込まれかねないと警鐘を鳴らした。
背景
トランプ政権は、麻薬カルテルを軍事作戦の相手として扱ってきた。米国務省は2025年2月20日、ベネズエラの犯罪組織トレン・デ・アラグアやメキシコのシナロア・カルテルなど8組織を外国テロ組織に指定した。トランプ大統領は同年9月2日、自らの命令で米軍がカリブ海の公海でトレン・デ・アラグアの船を攻撃し、乗っていた11人を殺害したと発表した。
船への攻撃はこれ以降も続き、今回の報道までに71回に達した。今回の派遣は、海での攻撃から陸上へと活動の場を広げる動きにあたる。
日本にとっての意味
日本も、ソマリア沖・アデン湾で海賊という越境犯罪への対処を自衛隊に担わせてきた。ただし海賊対処法は、軍に警察任務を委ねる際の歯止めを条文で定めている。
第7条は、防衛大臣が自衛隊に対処を命じられるのは「特別の必要がある場合」で首相の承認を得たときに限ると定め、必要性・区域・部隊の規模と構成・装備・期間を記した対処要項の作成を義務づける。承認後、首相は国会に報告しなければならない。目的を明示せず一時的な派遣を積み重ね、常設化もありうるとされる今回の進め方とは対照的な仕組みといえる。
さらに護衛艦には、海賊事案が起きた際に被疑者の逮捕・取調べ・採証を担う海上保安官が「ソマリア周辺海域派遣捜査隊」として同乗する。証拠を示さず少なくとも239人を殺害した米国の作戦とは対照的に、日本の制度は逮捕と証拠の提示に行き着くよう設計されている。