カンボジアで生後9か月児がH5N1感染、米国は養鶏場と乳牛で検出拡大
感染症専門メディアのCIDRAP(米ミネソタ大学感染症研究政策センター)が現地時間7月16日に伝えたところによると、カンボジアで生後9か月の女児がH5N1型鳥インフルエンザに感染し、集中治療を受けていることが分かった。同時期に米国でもユタ州の採卵養鶏場や複数州の乳牛でH5N1の検出が続いており、家禽・畜産の現場での広がりが改めて浮き彫りになった。
何が起きたのか
カンボジア当局によると、この女児は同国で2026年に入って5例目のヒトH5N1感染例となる。7月中旬の時点で感染源や、どこでウイルスに曝露したかは特定できていない。念のため、女児と近い接触があった人にはタミフル(オセルタミビル)が予防的に投与されているという。カンボジアでは2025年の1年間だけで19例のヒト感染が報告され、うち8例が死亡している。最近の症例の多くは、2014年から同国で確認されている旧来のH5N1系統と、世界的に流行している新しい系統2.3.4.4bが混ざり合ってできた「2.3.2.1e」というリアソータント(reassortant、複数のウイルスが遺伝子を交換して生まれた新しい型)によるものとされる。
米国では、米農務省(USDA)傘下の動植物衛生検査局(APHIS)が、ユタ州キャッシュ郡の採卵養鶏場でのH5N1発生を2週連続で報告した。直近の発生では27万5100羽が影響を受けた。7月中旬までの30日間で見ると、米国内で149万羽がH5N1の影響を受けたことになる。加えて、ユタ州とアイダホ州でそれぞれ4件ずつ、計8件の乳牛への新規感染が確認された。これは直近30日間で26件確認された牛の感染に含まれるもので、2026年の年間累計は81件に達している。
背景
H5N1はもともと野鳥や家禽の間で流行してきた鳥インフルエンザウイルスだが、近年は世界各地でウイルスの系統(クレード、clade)が枝分かれしながら広がり、哺乳類への感染例も相次いで報告されるようになった。米国では2024年以降、乳牛での感染が確認されるようになったとされる。これ自体が新しい動きで、酪農従事者を通じたヒトへの散発的な感染も過去に報告されている。カンボジアのように、古い地域流行株と新しい世界的流行株が混ざり合ったリアソータントが人に感染する例は、ウイルスが変化を続けていることを示す材料として、公衆衛生の専門家が注視しているという指摘がある。感染源が特定できないまま重症化した今回の女児の例も、そうした監視の対象として位置づけられるとみられる。
日本にとっての意味
日本でも毎年冬になると各地の養鶏場で高病原性鳥インフルエンザが発生し、感染が確認されると周辺農場を含めて大規模な殺処分が行われる仕組みになっている。こうした発生は鶏卵の供給量や価格にも影響を及ぼすことがある。また、家禽肉や鶏卵の輸入は、発生が確認された国・地域単位で一時的に停止されるのが通例とされ、米国の養鶏場での発生状況は日本の輸入にも関わる。米国で広がる乳牛での検出については、牛乳の低温殺菌(パスチャライゼーション)がウイルスを不活化する管理の要になるとみられており、乳製品の安全性を考えるうえでも参考になる事例といえる。さらに、東南アジアへの渡航時に生きた鳥を扱う市場に立ち寄る機会がある人にとっては、カンボジアでの人への感染例が続いていることは、渡航前に知っておく価値のある情報だろう。