中国でH9N2型鳥インフルエンザ感染続く、豪州は野鳥感染拡大
香港政府の衛生防護センター(CHP)は、中国本土でH9N2型鳥インフルエンザの新たな人への感染事例が4件確認されたと発表した。同じ時期にオーストラリアでは、野鳥の間でH5N1型鳥インフルエンザの検出数が急増している。いずれも家禽(かきん、ニワトリなど食用の鳥)や野鳥を介して人や他の動物に広がる可能性があるウイルスで、東アジア・オセアニア地域での監視が続いている。
何が起きたのか
CHPによると、新たに感染が確認されたのは甘粛省の3歳女児、江蘇省の12歳男児、江西省の72歳女性、雲南省の58歳女性の4人。いずれも現地の7月5日から13日の間に発症した。症状の経過や現在の容体については公表されていない。この4件を含め、過去6か月間に確認されたH9N2型の人への感染は世界で20件にのぼる。このうち中国本土が12件を占め、香港、台湾、イタリアでも各1件が報告されている。残る5件の内訳は資料からは明らかにされていない。WHOによると、2015年以降に西太平洋地域で報告されたH9N2型の人への感染は累計164件で、うち2件が死亡している。死亡した2人はいずれも基礎疾患を抱えていたという。
一方、オーストラリアでは別の型であるH5N1型鳥インフルエンザが野鳥の間で広がっている。同国では大陸にウイルスが侵入したのち、7月20日から元記事の公開時点までの間に野鳥での検出数が20件から102件に増加した。大半は南オーストラリア州での検出という。現時点では、養鶏場など家禽業界や農業分野への感染は確認されていない。
背景
H9N2型は、鳥から鳥へ感染する鳥インフルエンザウイルスの一種で、人に感染しても多くの場合は軽症で済むとされる。ただし、ウイルスは遺伝子変異を起こしやすく、他の鳥インフルエンザウイルスと「遺伝子の交雑(リアソートメント、reassortment)」を起こすことで、より重症化しやすい型や人から人への感染力を持つ型が生まれる懸念が専門家の間で指摘されている。中国では家禽の飼育規模が大きく、市場での生きた鳥の取引も残っているため、ウイルスが人と接触する機会が他地域より多いとみられる。
H5N1型は近年、世界各地で野鳥や哺乳類への感染が拡大している別系統のウイルスで、家禽への感染力が強く、大量死や殺処分につながることが多い。オーストラリアはこれまで大陸として比較的長くH5N1型の侵入を免れてきたが、今回の検出急増は、渡り鳥の経路を通じてウイルスが持ち込まれ、野鳥の間で定着しつつある可能性を示す。家禽業界への波及がまだ確認されていない点は救いだが、野鳥での検出数が短期間で5倍に増えていることから、養鶏場への侵入リスクは今後も注視が必要とみられる。
日本にとっての意味
日本でも冬場を中心に、渡り鳥を介した野鳥や養鶏場でのH5N1型感染がほぼ毎年報告されており、感染が確認されると周辺農場での鶏の殺処分や移動制限といった対応が取られてきた。オーストラリアでの野鳥感染拡大は、渡り鳥の飛来ルートを通じて日本を含む周辺国にもウイルスが運ばれる可能性を示す事例として参考になる。また、中国でのH9N2型感染の継続的な報告は、動物や畜産物の検疫体制のほか、中国への渡航者への注意喚起の材料となる。現時点では日本国内での人への感染の報告はなく、過度に心配する段階ではないが、家禽産業への影響や検疫上の判断材料として、こうした海外の動向を継続的に把握しておく価値はある。