ブラジル最高裁、大豆モラトリアム巡る州法を合憲と判断
ブラジル連邦最高裁は、アマゾンで森林を伐採した土地で作られた大豆の購入を拒む業界の自主協定「大豆モラトリアム(soy moratorium)」について、その協定自体と、この協定に参加する農家への税優遇を拒否する州法の両方を合憲と判断した。ただし、この協定はすでに大手穀物商社の離脱で機能しなくなっており、判決が出ても復活する可能性は低いとみられている。
何が起きたのか
大豆モラトリアムは、アマゾンの森林を伐採して開拓した土地で栽培された大豆を、参加企業が買い取らないことを取り決めた業界の自主協定で、約20年にわたり続いてきた。ところが主要な大豆生産州がこの協定に参加する企業への税制優遇を打ち切ったことを受け、ことし1月、大手穀物商社が相次いで協定から離脱した。今回の最高裁判決は、この一連の出来事の後に出されたもので、州が協定参加企業への税優遇を拒む法律を持つことも、協定そのものが法律上問題のない仕組みであることも、どちらも認める内容になっている。つまり最高裁は協定を違法とはしていないが、同時に、協定に加わった農家を州が税制面で不利に扱うことも違法ではないと認めた形だ。ブラジル植物油工業協会は、この判決によって長年続いていた法的な不透明さには区切りがついたものの、協定そのものが息を吹き返す見込みは薄いとの見方を示したという。
背景
大豆モラトリアムは、もともと政府による規制ではなく、穀物商社や食品企業が自主的に結んだ民間の取り決めだった。アマゾンの森林破壊が国際的に問題視される中、輸出先の欧米の消費者や取引先企業からの圧力を受け、業界側が「森林を切り開いた土地の大豆は買わない」という共同ルールを作ることで、ブランドイメージやサプライチェーンへの批判を避けようとした側面があるとみられる。一方でブラジル国内では、この協定を私有地の利用を制限する不当な取り決めだと捉える生産者や州政府があり、対抗する形で、協定に参加する企業や農家への税制優遇を打ち切る州法が作られてきたとされる。今回の判決は、この対立する二つの仕組み、業界の自主協定と、それを事実上締め付ける州法の双方に法的なお墨付きを与えた格好だ。しかし合憲だからといって、すでに大手商社が抜けてしまった協定に企業が自主的に戻る保証はなく、同協会が指摘するように、実務上は協定の形骸化がこのまま続く可能性が高い。
日本にとっての意味
ブラジルは世界最大の大豆生産国で、世界の生産量の約4割を占めるとされる。日本の食品メーカーや飼料メーカー、商社は、こうした業界の自主協定を一種の目安として、森林破壊に関わっていない大豆かどうかを間接的に確認してきたとみられる。法律による規制ではなく企業間の自主的な取り決めに頼る仕組みは、遵守企業が増えるほど市場全体の「共通のふるい」として機能しやすい一方、今回のように主要企業が抜けてしまうと、この共通のふるい自体が失われる。その場合、伐採地産かどうかを見分ける作業を、輸入する側の日本企業がそれぞれ自前で行わなければならなくなる可能性がある。欧州連合などでは森林破壊に関連する産品の輸入を規制する法制度の整備が進んでいるとされ、業界の自主協定に頼ってきた調達の仕組みが、法律による規制へと置き換わっていく流れの中に、この判決も位置づけられそうだ。日本の食品・飼料業界にとっても、大豆の調達方針や取引先の選定基準を見直す契機になりうるといえる。