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光州ビエンナーレ、台湾パビリオンの名称めぐる対立が決着

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韓国で現地の9月5日に開幕する光州ビエンナーレの関連展示をめぐり、出展団体の名称が「台湾パビリオン」から国立台湾美術館(NTMoFA)の略称に無断で変更されたとの訴えが起き、10日間の応酬の末に主催者側が現地時間25日、「台湾パビリオン」の名称使用を正式に認めた。台湾当局は主催者との合意に基づき、NTMoFAに対して台湾を代表する参加であることを確認する公文書を送付した。

何が起きたのか

発端は今年8月、光州ビエンナーレ財団(GBF)が公開した関連パビリオンの一覧ポスターだった。そこには「NTMoFAパビリオン」と記載されており、現地の8月15日、キュレーターの陳湘汶(チェン・シャンウェン)氏と参加作家9人がインスタグラムで、台湾パビリオンとして提出・受理されていた企画が参加チームの同意なく改名され、「ポスターから台湾が乱暴に消された」と訴えた。投稿は、これは単なる名称の削除にとどまらないとしたうえで「表現の自由と世界の美術コミュニティへの脅威だ」と訴えるもので、世界中の美術関係者や台湾・韓国の市民から支持が広がった。

これに対しGBFは現地の8月19日、この出展は国別ではなく美術館単位の「機関パビリオン」であり、現地の1月12日の合意で美術館名を冠することが決まっていたと説明した。一方、台湾文化部(文化省に相当)も同日、企画書やメールのやり取りには一貫して「台湾パビリオン」と明記されており、現地の4月2日付の合意書もその名称だったと反論し、現地の6月10日以降は水面下で異議を申し入れてきたとする経緯を公表した。韓国メディアは会場となる光州のアジア文化殿堂(ACC)周辺に立入規制線が張られたと報じ、台湾側は名称をめぐる行き詰まりで設営作業が止まっていると主張していた。

最終的にGBFは台湾文化部との協議を経て、現地の8月25日に「台湾パビリオン」の名称使用を正式に承認したと発表した。台湾文化部はNTMoFAに対し、台湾を代表する機関として本展に参加することを確認する公文書を送付し、GBFもACCに展示続行を認める正式な依頼書を送った。GBFは今回の決定理由を具体的には示していないが、宣伝物の表記変更について現在協議中だとしている。キュレーターの陳氏は背後により大きな政治的圧力があった可能性を公に示唆したが、中国や韓国政府の関与を裏付ける証拠は示されていない。中国はこの騒動について公には沈黙を保っている。

背景

台湾は中国大陸が自国領土だと主張する自治地域で、独自の活発な美術シーンを持ち、作家たちはアジアや世界の展示に積極的に参加している。しかし多くの国際秩序の枠組みでは国家として法的に承認されておらず、政府としての対外的な文化・スポーツ参加は制約を受けやすい。例えばオリンピックなど国際スポーツ大会では、中国大陸の圧力により「チャイニーズタイペイ」という名称での参加を強いられており、これは台湾の人々にとって長年の痛みとなってきたとされる。韓国は中国と外交関係を維持する一方で台湾を国家として承認していない。光州ビエンナーレは出展形態を「国別パビリオン」と「機関パビリオン」に分けており、国別として出展するには大使館や文化省の正式な承認書が必要だとされる。今回の対立は、この区分の運用と、台湾という名称そのものが持つ政治的な重みが交錯した結果とみられる。

日本にとっての意味

日本の読者にとって「チャイニーズタイペイ」という表記は、オリンピックなどでなじみがあるだろう。今回の光州ビエンナーレの一件は、それと同じ力学が国家間の外交交渉だけでなく、美術展という民間・文化の現場にも及ぶことを具体的に示している。日本国内でも近年、国際芸術祭や美術館が台湾の作家や美術館と協力する機会は少なくないとみられる。台湾の団体を「国」として招くのか、それとも特定の美術館という「機関」として招くのかという区分の選び方ひとつで、今回のような名称をめぐる対立が起こりうる。政治的な立場を明確にしたくない主催者が、意図せずして表現の自由や当事者との信頼関係を損なう結果を招きかねないという点で、日本の美術館や芸術祭の運営者にとっても他人事ではない事例だといえる。