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ワクチン推奨、医学団体が独自策定 政府指針の空白埋める 米国

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米ミネソタ大学のワクチン・インテグリティ・プロジェクト(Vaccine Integrity Project、VIP)と米国医師会(AMA)は現地時間9月2日、インフルエンザ、新型コロナウイルス(COVID-19)、RSウイルス(RSV)の3つのワクチンについて独自に実施した証拠レビューの結果を医学誌JAMAに発表した。米国では連邦政府のワクチン審査・承認の手続きが混乱しており、複数の医学団体が政府の指針の空白を埋める形で今シーズンの推奨をまとめる異例の動きとなっている。

何が起きたのか

VIPとAMAの発表に先立つ現地時間9月1日の記者会見では、米家庭医学会(AAFP)、米小児科学会(AAP)、米産科婦人科学会(ACOG)、米感染症学会(IDSA)という主要4団体が、2026〜27年シーズンに向けた各団体独自のワクチン推奨を示した。

VIPの証拠レビューチームを共同で率いたニコール・バスタ氏によると、インフルエンザワクチンは65歳以上の入院リスクを31%下げ、妊娠中の接種は生後6か月までの乳児の発症を44%減らし、6か月から17歳の子どもの接種はインフルエンザによる死亡を80%減らすとの結果が示された。

COVIDワクチンについては、65歳以上で入院リスクが53%低下し、免疫不全のある人では集中治療室(ICU)入室や死亡が基礎疾患によって32〜53%減るとされた。妊娠中の接種は救急外来や緊急受診を58%減らし、乳児の入院を生後1年で36%減らすほか、9か月から4歳の子どもでは小児救急受診が76%減ったという。

RSVについては、60歳以上のワクチン接種で入院が69〜83%減少し、妊娠中の接種はRSV感染を82%減らすとともに乳児の入院も防ぐ。生後間もない乳児に投与するモノクローナル抗体ニルセビマブ(製品名Beyfortus)は、入院リスクを64〜93%下げるとの結果だった。一方でRSVワクチンを毎年繰り返し接種する必要があるかどうかは、証拠が不十分だとバスタ氏は述べた。

これらのデータを踏まえ、各団体の医師はVIPのレビュー結果を検討したうえで今シーズンに向けた推奨をまとめた。会見で示された推奨には、19歳超への更新版COVIDワクチン、65歳超への6か月あけた追加接種、6か月から64歳への更新版インフルエンザワクチン、65歳以上への高用量または改良型インフルエンザワクチン、50〜74歳のハイリスク者と75歳超全員へのRSVワクチン、母親が妊娠中にRSVワクチンを接種していない場合の生後8か月未満の乳児へのニルセビマブ投与などが含まれるが、各団体の推奨は対象とする患者層によって少しずつ異なるという。

背景

米国では通常、疾病対策センター(CDC)傘下の予防接種諮問委員会(ACIP)が科学的証拠を審査して政府としての推奨を決め、それに基づいてワクチンの接種対象や保険適用が定まる仕組みとされる。ところが近年、この連邦の審査・承認プロセスが機能不全に陥っているとの指摘が医学界から相次いでおり、VIPのボード議長を務めるブルース・ゲリン氏は会見で「連邦のプロセスが崩れたことで、証拠に基づくワクチン指針に空白ができるのを放置できない」と述べた。CIDRAP所長のマイケル・オスターホルム氏も、VIPの取り組みはACIPに取って代わるものではなく、あくまで「暫定的な代替措置」だと位置づけている。

今回の動きは、政府の方針が定まらない中で、医師や患者が「誰を信頼すればよいか分からない」という状況に陥っていることへの、医学界側からの応答だと言える。米国ではワクチンの推奨対象は保険適用の範囲にも直結するとされ、政府の推奨が曖昧になることは接種率や医療費負担に影響しうる。

日本にとっての意味

日本では、厚生労働省とその審議会がワクチンの接種対象や定期接種の位置づけを決めており、米国のように政府方針が揺らいで医学会が独自に代替策を示すという事態は今のところ想定しにくいとみられる。しかし、日本で使われるインフルエンザワクチンやCOVIDワクチン、乳児向けのRSV予防薬ニルセビマブは、いずれも米国を含む海外での臨床データが承認や接種方針の判断材料になっているとみられ、米国の審査体制が不安定になれば、こうした国際的なエビデンスの蓄積や供給網に影響が及ぶ可能性がある。

また今回、AMAなど専門家団体が政府方針とは別に科学的根拠に基づく推奨を独自に示したことは、行政の意思決定が政治的な事情で揺らいだ際に、専門家集団がどうバランスを取り戻すかという一つの事例でもある。日本でも今後、行政と専門家の判断が食い違う場面が生じた場合にどのような手続きで収拾されるのか、今回の米国の動きは参考になる材料と言える。