イラン、ホルムズ海峡外に新たな「制限区域」設定へ 違反船は制裁対象に
イラン国家安全保障最高評議会のモフセン・レザイー書記が、ホルムズ海峡の外側に新たな「制限区域」を数日中に設定すると表明した。この区域に入った船舶は制裁対象になるという。イランはまた、海峡を通る新たな航路をめぐりオマーンと近く協定を結ぶ考えも示した。
何が起きたのか
イラン国営のプレスTVによると、レザイー書記は現地時間6日、テレビの取材でこの方針を語った。新たな区域は米海軍の封鎖ラインから始まり、湾内の一部にまで及ぶという。同氏は「この新たな区域に入った船舶はすべて制裁対象リストに載せられる」と述べた。
レザイー書記はさらに、ホルムズ海峡の入り口と出口をイランが管理する新たな航路について、オマーンと近く合意に至ると説明した。トランプ米大統領が海峡は依然として通航可能だと主張していることについては大きな嘘だと切り捨て、海峡は「完全に封鎖され、軍の管理下にある」と述べた。
同氏によれば、イランが海峡を封鎖する前は1日あたり100隻を超える船舶が1億トン以上の貨物を運んでいたが、現在イランに必要な物資を運ぶ船は7、8隻にとどまるという。米国側が多額の費用をかけて5、6隻の船を通過させようとしているが、たいてい攻撃を受けるとも主張した。ただし、積み荷が原油であり環境への被害を避けるため、船を沈めることはしない方針だと述べた。
同氏はまた、48時間前に米海軍艦艇の上空で対艦ミサイルの試射に初めて成功したとも語ったが、艦艇名や場所は明らかにしなかった。
米国による経済封鎖がイラン国内で深刻な飢饉を引き起こしているとの指摘についても、政府は食料や必需品を十分に備蓄しているとして否定した。
背景
ホルムズ海峡は中東の産油国と外洋を結ぶ狭い海峡で、世界の原油海上輸送のかなりの部分がここを通るとされる。イランはたびたびこの海峡の管理権を交渉材料として持ち出してきた経緯があり、今回の「制限区域」構想もその延長線上にあるとみられる。
地域の緊張は、現地時間2026年2月28日に米国とイスラエルによるイランへの攻撃が始まって以降、急速に高まった。イランはこれに対しミサイルやドローンでイスラエルや米国の権益を攻撃し、応酬が続いている。2026年6月には、パキスタンとカタールの仲介により米国とイランが覚書を結び、敵対行為の終結やホルムズ海峡の再開、経済制裁をめぐる問題への対応が盛り込まれた。しかし双方はその後、互いに覚書の内容を履行していないと非難し合っており、軍事的な緊張や海峡の航行をめぐる対立は解消していない。
なお、今回レザイー書記が示した船舶数や被害の詳細は、イラン国営放送を通じた同国高官の発言に基づくものであり、独立した検証はできていない点には留意が必要だろう。
日本にとっての意味
日本が輸入する原油の大半は中東地域からのものであり、その多くがホルムズ海峡を経由して運ばれているとされる。イランが海峡の外側にまで独自の「制限区域」を設定し、違反船を制裁対象にすると表明したことは、日本向けのタンカーを含む航行全般のリスクが一段と読みにくくなることを意味する。区域の具体的な範囲や運用方法はまだ明らかになっていないが、対象船舶の判断基準しだいでは、産油国から日本へ向かう航路そのものが影響を受けかねない。
また、こうした緊張の高まりは、タンカーの保険料上昇や運航ルートの見直しといった形で、原油の調達コストに跳ね返る可能性がある。日本政府や海運会社にとっては、実際にタンカーへの攻撃や拿捕といった事態が起きてから対応するのではなく、今回のような政策発表の段階から情報を注視しておくことが、供給網の安定を保つうえで重要になる。