イランとオマーン、ホルムズ海峡に一時的な安全航路で合意へ
イラン外務省は現地時間9月7日、ホルムズ海峡を通る「一時的で安全な航路」についてオマーン政府との合意を最終調整していると発表した。海峡は2026年2月下旬に米国とイスラエルの攻撃を受けて始まった戦争の影響で、通航が大きく制限された状態が続いている。合意は数日のうちに国際海事機関(IMO)に登録される見通しだという。
何が起きたのか
イラン外務省報道官エスマイル・バゲイ氏は、オマーン沖の海峡南部に国連の支持で設けられている迂回航路には反対する立場を示しつつも、オマーン政府とは以前から一時的な安全航路について協議を続けてきたと説明した。イランはホルムズ海峡の管理権を主張しており、独自の航路をオマーン側と設けることで、通航の安全を確保しつつ自国の立場を保とうとしているとみられる。ただし、この航路が実際にどの程度機能するのか、米国側がこれを認めるのかは、今回の発表だけでは分からない。
戦争が始まって以降、イランは海峡封鎖を試み、米国経済に打撃を与えようとしてきた。これに対し米国はイランの港に対する海上封鎖を実施し、イラン側の攻撃を受けながらもタンカーの護衛を続けている。海峡の通航は大きく制限されており、世界の原油・天然ガス輸送における最重要航路の一つが影響を受け続けている。
バゲイ氏はまた、米国と欧州の同盟国が用意した国連決議案について「不誠実さの表れ」だとし、事態を悪化させる狙いがあると批判した。外交筋によると、米国・英国・フランス・ドイツは、イランを核不拡散条約(NPT)上の義務違反として国連安全保障理事会に付託することを目指す決議案を、国際原子力機関(IAEA)の理事会に提出する準備を進めている。
背景
NPTのもとでイランは、保有する核物質や活動をすべて申告し、ウィーンに本部を置くIAEAの査察官が平和目的以外に転用されていないことを検証できるようにする義務を負っている。この付託をめぐる動きは2025年6月から検討されてきた。IAEA理事会がこの時、20年ぶりにイランを義務不履行と正式に認定しており、その翌日に米国とイスラエルがイランの核関連施設を攻撃したという経緯がある。両者の因果関係は今回の資料からは明確ではない。
安保理への付託が実現すれば、対応の権限はより上位の機関に移り、制裁や資産凍結といった法的拘束力のある措置を発動できるようになる。イラン政府が核問題での圧力を受けながら、同時にホルムズ海峡での安全航路を模索している構図は、軍事的な緊張と経済的な実利の両方を天秤にかけたイラン外交の一端を示しているといえる。
日本にとっての意味
ホルムズ海峡は日本が輸入する原油の大半が通過するとされる航路であり、この海峡の通航状況は日本のエネルギー安全保障に直結する。今回の焦点である「IMOへの登録」という手続きは、地味に見えるが実務上の意味は大きい。ある航路が正式にIMOに登録されれば、世界の海運業界がその航路の存在を認識し、航行計画や保険料の算定、配船判断の材料として扱えるようになるとされる。
逆に言えば、登録されるまでは、この一時的な安全航路が実際にどれだけの船舶に使われ、どの程度の安全性を持つのか、外部からは見えにくい。日本の海運会社が運航するタンカーがこの航路を利用するかどうかも、今回の発表だけでは判断できない。中東依存度の高い原油・液化天然ガス(LNG)の調達構造を持つ日本にとっては、海峡情勢の細部を継続的に追う必要があるテーマであり、国家備蓄の運用方針にも関わってくる可能性がある。