感染症・健康

コロナだけじゃない インフル・RSウイルス後も続く症状

世界の記事一覧

コロナ後遺症のように感染から回復した後も症状が長引く現象は、新型コロナウイルスに限った話ではないことが、新しい系統的レビュー(複数の研究結果をまとめて分析する研究)で示された。インフルエンザやRSウイルス、ヒトメタニューモウイルスといった呼吸器系のウイルス感染でも、数か月にわたって肺の不調や倦怠感、記憶の問題、心臓の異常が続く例が報告されている。研究チームは、こうした症状の実態がこれまで十分に把握されてこなかったと指摘している。

何が起きたのか

医学誌Respirologyに発表されたこのレビューは、2004年1月から2025年8月までに発表された観察研究13本、合計63万1863人分のデータを分析したものだ。シンガポールのデューク・NUS医学大学院(Duke-NUS Medical School)などのチームがまとめた。

最も多く研究されていたのはインフルエンザで、目立ったのは肺の機能低下だった。ある小規模研究では、重症インフルエンザから回復した患者の78%が、2年後の時点でも肺から血液へ酸素を取り込む力が低下していた。より大規模な調査でも同様の傾向が見られ、オーストラリアで951人のインフルエンザ患者を追跡した調査では、23%が発症から12週間後も何らかの症状を訴えていた。

ドイツの保険データ約57万人分を分析した研究では、急性期から3〜6か月後の時点で23%が記憶の問題を、44%が味覚のゆがみや嗅覚の低下を報告していた。この57万人という数は、レビュー全体の対象者63万人余りの大半を占めており、ドイツの1つのデータセットの結果である点には留意が必要だ。

RSウイルス(RSV、乳幼児や高齢者に肺炎などを起こしやすい呼吸器のウイルス)に関する研究では、心臓や血管に関わる症状が最も目立った。米国でRSウイルスにより入院した成人441人のうち16%が、発症の29日後から半年後までの間に心臓関連の事象を経験しており、月あたりの発生率は入院前の半年間と比べて1.6倍に上っていた。ヒトメタニューモウイルスで入院した92人を対象にした小規模研究でも、55%が発症から3〜9か月後の時点で何らかの症状を訴えていた。

ただし研究チームは、対象となった研究の多くが観察研究であり、入院が必要になるほど重症だった患者に偏っている点に注意を促している。症状の測り方や追跡期間も研究ごとにばらばらで、軽症で済んだ人にどれだけ長引く症状が起きるかは、このレビューだけでは分からない。研究チームは論文の中で「非コロナの呼吸器ウイルス感染後に残る症状を理解することは、その世界的な負担の大きさと、これまで十分に特徴づけられてこなかったことを踏まえると、臨床のケアや公衆衛生の政策を導くうえで重要だ」と述べている。

背景

感染後に体調不良が長く残るという現象自体は、新型コロナウイルスが初めて生み出したものではないとみられる。しかし新型コロナの世界的な流行は、この現象に「コロナ後遺症」という広く知られた名前を与え、大規模な追跡調査や研究費を呼び込む結果になったとみられる。

研究チームが論文で「十分に特徴づけられてこなかった」と述べているように、インフルエンザやRSウイルスについても似たことが起きている可能性は以前から指摘されつつも、コロナほど体系的には調べられてこなかったという見方ができる。今回のレビューは、コロナ研究で培われた調査の枠組みを他の呼吸器ウイルスにも当てはめ直した結果とみることができる。

日本にとっての意味

日本はこれから季節性インフルエンザの流行期に入る時期にあたる。今回のレビューが示すのは、発熱やせきといった急性期の症状が治まった後も、息切れや疲れやすさ、記憶力の低下といった不調が続くことがあり、それは新型コロナに限った話ではないという点だ。こうした症状が長引く場合、「コロナ後遺症」の枠にとらわれず受診や相談を検討する材料になり得る。

RSウイルスをめぐっては、感染後に心臓や血管の症状が起きやすいという今回の報告も見逃せない。日本でも高齢者向けのRSウイルスワクチンが使えるようになり、接種を勧める動きが広がっているとみられるが、その背景には呼吸器症状だけでなく心臓への影響も含めた健康リスクがあることを、この研究は改めて示している。高齢の家族がいる読者にとっては、感染後しばらくたってからの体調変化にも注意を払う理由になるだろう。

もっとも、今回のレビューが対象としたのは主に入院するほど重症だった患者のデータであり、軽い症状で済んだ場合にどの程度当てはまるのかは分かっていない。過度に不安を抱く必要はないが、感染後の不調が長引くときに「よくあることだから」と自己判断せず、医療機関に相談する選択肢を知っておく価値はある。