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石炭火力の延命命令は違法、米連邦控訴裁がエネルギー省の緊急権限を否定

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米国の連邦控訴裁判所は現地時間9月11日、トランプ政権のエネルギー省がミシガン州の石炭火力発電所を予定より長く稼働させ続けるよう出した命令について、権限を超えた違法なものだったと判断した。発電所は廃止予定を過ぎても運転が続けられており、環境団体とミシガン、イリノイ、ミネソタの3州がこの命令の取り消しを求めて提訴していた。判決は3人の判事全員一致によるものだった。

何が起きたのか

争われたのは、ミシガン州ウェストオリーブにある「J.H.キャンベル発電所」をめぐるエネルギー省の命令だ。同発電所は運転開始から64年が経ち、2025年中の廃止が予定されていた。エネルギー省のクリス・ライト長官は、地域の電力を安定的に供給するためにこの発電所が必要だとして、緊急時に発動できる権限を使い、稼働を継続させた。

これに対し、環境団体と3つの州は、法律が定める「緊急事態」には当たらないとして裁判所に訴えた。首都ワシントンにある連邦控訴裁判所は、州と環境団体の主張を認めた。判決を執筆したコーネリア・ピラード判事は、緊急命令を認める連邦電力法(Federal Power Act)の規定について、「本質的に狭く、最後の手段としての備え」だと述べ、今回のケースはこれに当たらないとした。

発電所を稼働させ続けたことで、2025年の1年間だけで少なくとも1億3500万ドルの費用がかかったという。エネルギー省はこの判決についてのコメント要請に、すぐには応じなかった。

背景

アメリカでは近年、老朽化した石炭火力発電所が採算の悪化や環境規制の強化を背景に、相次いで廃止が計画されている。発電会社は数年がかりで廃止計画を立て、代わりの電源を確保したうえで運転をやめるのが通常の手順だ。今回の発電所も、そうした計画済みの廃止を控えていた。

そこにエネルギー省が緊急権限を使って介入し、稼働継続を命じた形になる。判決は、こうした計画済みの廃止を土壇場で覆すこと自体が「混乱を招く」と指摘した。緊急時の権限は、あくまで想定外の事態に備えた例外的な仕組みであり、日常的な電力需給の見通しを理由に使うべきものではない、という考え方が背景にあるとみられる。

環境団体エンバイロンメンタル・ディフェンス・ファンド(EDF)の担当者テッド・ケリー氏は、今回の判決について、老朽化して採算が悪化した石炭火力の延命をトランプ政権が押し通そうとしてきた試みが否定されたものだ、と述べた。ただしこの判決自体が対象にしているのは、あくまでミシガン州の発電所をめぐる今回の命令であり、他の発電所をめぐる同種の争いは、報道によれば各地で別個に係争中とされる。

日本にとっての意味

日本でも、電力需給がひっ迫する見通しが出るたびに、廃止予定だった老朽火力発電所を延命させるかどうかが議論になってきた。今回のアメリカの訴訟は、こうした「需給ひっ迫を理由にした延命」という同じ構図について、行政の権限の使い方としてどこまで許されるのかを裁判所が正面から問うた事例といえる。

争点の核心は、誰がその延命コストを負担するのかという点にある。アメリカの今回のケースでは、発電所を稼働させ続けた費用は最終的に電気料金を通じて利用者が負担する構造になっているとみられ、環境団体は電気料金の負担が増えると批判した。日本でも、老朽火力の維持や再稼働にかかる費用は、電気料金や電力供給力を確保するための仕組みを通じて、結局は利用者が広く負担する形になりやすい。

もう一つの論点は、行政機関がどこまで「緊急」を理由に既存の計画を覆せるかという、より一般的な統治のあり方に関わる。今回の判決は、あらかじめ計画され周知されてきた廃止を、行政が土壇場の判断で覆すことに慎重であるべきだという姿勢を示したものだ。エネルギー政策に限らず、行政の裁量がどこまで認められるべきかという問いとして、日本の読者にとっても参考になる面があるだろう。