米EPA、火力発電所の温室効果ガス排出規制を撤廃 コスト3000億ドル超削減と説明
米環境保護局(EPA)が、石炭火力と天然ガス火力の発電所を対象に温室効果ガスの排出量を制限してきた規則を撤廃した。AP通信が現地時間9月14日に伝えたところによると、EPAはこの措置によって業界のコストが3000億ドル(日本円で数十兆円規模)を超えて減ると説明し、米国のエネルギーを「解き放つ」ことにつながるとしている。この規則の撤廃案は2025年に示されていた。
何が起きたのか
今回撤廃されたのは、石炭・天然ガスを燃料とする発電所からの温室効果ガス排出を制限する規則だ。EPAはこの撤廃により、電力業界に3000億ドルを超えるコスト削減効果があると説明している。あわせて、規制を外すことが米国のエネルギー生産を「解き放つ」ことにつながるとも述べている。
EPA当局者は、老朽化した発電所や効率の悪い発電所を規則によって強制的に閉鎖させるのではなく、料金を負担する利用者にとって最善の判断を電力会社が下せるようにする狙いだと説明している。裏を返せば、これまでの規則の下では、排出削減のために発電所の閉鎖を迫られるケースがあったということになる。
今回の措置は、民主党のオバマ、バイデン両政権が進めてきた気候変動対策や産業公害の抑制策からの根本的な方向転換だとAP通信は位置づけている。
背景
米国では、環境規制の内容が政権交代のたびに大きく揺れ動く傾向がある。発電部門の温室効果ガス規制は、化石燃料への依存度が高い米国の排出量に直結するため、歴代の民主党政権が対策の柱の一つに据えてきた分野とみられる。一方で共和党政権は、こうした規制がエネルギー産業のコストを押し上げ、電力会社の投資判断を縛るとして見直しを進めてきた。
今回のような大規模な規則撤廃については、法廷で撤廃の是非が改めて問われる可能性があるとみられる。
日本にとっての意味
世界最大級の温室効果ガス排出国である米国が、発電部門の排出規制を撤廃することの意味は小さくない。国際的な気候変動対策の交渉では各国の削減目標の実効性が焦点になるが、主要排出国の一角である米国が規制を後退させる動きは、他国の交渉姿勢にも影響しうる点で注目に値する。
実務面では、米国内に生産拠点や事業所を持つ日本企業にとって、現地の電力供給に伴う排出量が自社の気候関連情報開示で重みを増す可能性がある。石炭・天然ガス火力が閉鎖されにくくなれば、米国内の電力の排出係数(発電量あたりの温室効果ガス排出量)が高止まりする場面も想定されるためだ。
また、天然ガス火力発電所が稼働を続けやすくなることで、米国内の天然ガス需要や輸出動向にも変化が生じうる。日本は米国産液化天然ガス(LNG)の輸入国でもあり、米国のエネルギー政策の転換は、間接的に日本のエネルギー調達環境にも関わってくるテーマといえる。