太平洋の「スーパーエルニーニョ」、水温上昇が過去最高水準に並ぶ
気候専門メディアCarbon Briefの分析によると、太平洋の熱帯域で進行中のエルニーニョ現象で、海面水温の指標が2015年に記録した過去最高値に統計上並んだ。今年のエルニーニョは6月から発生しており、通常なら11〜12月にかけて最も強まる現象だが、9月の段階で既にこの水準に達したのは異例だという。
何が起きたのか
エルニーニョの強さは、太平洋中央部の一定海域の水温が平年よりどれだけ高いかを示す「ニーニョ3.4指数」で測る。米海洋大気庁(NOAA)の算出方式に従うと、9月19日時点でこの指数は平年より3.07度高く、2015年11月に記録した過去最高値の3.08度とほぼ同水準になった。厳密には記録更新ではなく「並んだ」状態だが、比較に使う平年値の期間を1991〜2020年に取ると、既に記録を更新したとの見方を示す研究者もいるという。
どちらの計算でも、9月という早い時期にこの水準に達したこと自体が注目される。過去に強いエルニーニョが起きた年はいずれも、9月中旬以降さらに強まっており、今回も同様の傾向が続くとみられている。エルニーニョの強さは通常、平年より0.5度高いと「弱い」、1度超で「中程度」、1.5度超で「強い」、2度超で「非常に強い」と分類される。今年8月の月平均値は既に平年より2.45度高く、これは2015〜16年(2.75度)と、船舶の断片的な観測記録から復元した推定値である1877〜78年(約2.7度)を除けば、記録上のどのエルニーニョのピーク値をも上回る。
14の予測モデルを組み合わせた今後の見通しでは、今年後半のピーク時の月平均水温は平年より4.1度前後高くなり、674通りの計算のうち8割が3.4〜4.6度の範囲に収まるという。674通りの計算はいずれも、ピーク時に2015〜16年の記録を上回っている。ただしCarbon Briefも指摘する通り、これほど規模の大きいエルニーニョを対象にした予測モデルの検証実績はこれまでなく、実際8月の観測値は予測より平年比で0.3度ほど低かった。あくまで予測として受け止める必要がある。
背景
エルニーニョは、太平洋の熱帯域で数年に一度自然に起きる現象だ。海面水温の分布が変わることで世界各地の気象パターンに影響し、地球全体の平均気温を一時的に押し上げる。今回のエルニーニョは6月から発生し、来年まで続くとみられている。
エルニーニョの強さを測る指標には、実は複数の考え方がある。今回の記事で主に使われた「ニーニョ3.4指数」(ONI方式)は、直近30年の平均水温との差で計算するため、地球温暖化による長期的な水温上昇の影響をある程度取り除ける一方、比較対象の30年をどこに取るかで数値が変わってしまう。もう一つの指標であるRONI(relative Oceanic Niño Index、熱帯の海全体の水温上昇分をあらためて差し引いて計算し直した指標)は2024年にNOAAが導入したもので、今回の9月中旬の値は平年より2.5度ほど高く、これもこの時期としては記録的な高さだが、1982年に記録した過去最高値より0.7度低い。ただしその最高値は12月下旬、現象のピーク時のものであり、過去の強いエルニーニョはいずれも9月中旬からピークまでにさらに0.5〜1.9度上昇していたことを踏まえると、今後もっと伸びる可能性がある。
日本にとっての意味
今回の予測モデルには、日本の海洋研究開発機構(JAMSTEC)も名を連ねている。世界的な現象の観測・予測に日本の研究機関が実質的に関わっている点は、単なる海外の話として読み流せない理由の一つだ。
エルニーニョが日本の天候にどう影響するかは一様ではない。一般には、エルニーニョの年は日本付近で冷夏・暖冬になりやすいという傾向が指摘されてきた。気象庁も毎月エルニーニョの監視状況を発表しており、今後の発表でこの記録的な水温上昇が日本の季節予報にどう反映されるかが注目点になる。
エルニーニョは気温だけでなく、東南アジアや南米など太平洋周辺の農作物・漁業にも影響しやすく、日本が輸入に頼る穀物や水産物の価格や供給にも回り回って関わってくる可能性がある。海面水温という一見遠い数字が、今後数か月の国内の気象予報や輸入品の動向を読むうえでの手がかりになる。