米中西部の七面鳥農場でH5N1相次ぐ、カンボジアでも人感染
米国中西部の七面鳥農場や鴨の飼育施設で、H5N1型鳥インフルエンザの発生が9月以降相次いでいる。米感染症専門メディアCIDRAPが伝えた。同じ時期、カンボジアでは今年6人目となる人への感染例も報告された。
何が起きたのか
米農務省動植物検疫局(APHIS)の集計によると、直近30日間に商業用の家きん農場14件と、庭先などの小規模な飼育施設7件でH5N1の感染が確認され、合わせて62万羽が影響を受けた。季節的に発生が落ち着いていた8月には30日間の集計が15万羽まで下がっていたが、9月に入り再び増加に転じた。
地域別ではミネソタ州が突出しており、直近30日で商業農場8件、庭先の飼育施設3件が感染し、33万8650羽が影響を受けた。ノースダコタ州とサウスダコタ州の商業施設でも17万6900羽が影響を受けている。
直近1週間だけを見ると、家きんの施設4件(うち3件が商業用)で発生が確認された。ミネソタ州スターンズ郡の七面鳥農場2か所でそれぞれ7万7200羽と3万1200羽、インディアナ州ジェイ郡の鴨の繁殖用施設で2万4300羽が影響を受けたほか、アイオワ州ブーン郡の庭先の飼育施設(140羽)でも確認された。
APHISは野生の鳥でも新たに約40件の検出を報告した。カンザス州バートン郡で狩猟により捕獲された青色の翼を持つカモ(ブルーウィングティール)十数羽や、アイオワ州ハンコック郡で狩猟された個体からの検出が含まれるという。秋の渡り鳥の季節は例年、野生鳥での検出が増える時期にあたる。
米国外では、カンボジアで今年6人目となる人のH5N1感染が確認された。現地時間9月27日に陽性と判定されたのは49歳の男性で、農場で働き、病気の家きんと直接接触していたという。男性は現在も入院中。カンボジアでは2023年以降、40人の感染が確認されている。
背景
北半球では秋になると渡り鳥が南へ移動し、養鶏場周辺に飛来する野生の水鳥を介してウイルスが持ち込まれやすくなる。米国で8月に落ち着いていた発生が9月にかけて増加したのも、この移動のタイミングと重なっているとみられる。現在世界的に広がっているH5N1のクレード(clade、ウイルスの系統を示す分類)は2.3.4.4bと呼ばれ、2020年代に入り欧州や北米の野生鳥、米国の乳牛にまで感染が確認されるなど、従来のH5N1より宿主の範囲を広げてきたとされる。
一方カンボジアでは事情が異なる。同国では2014年ごろから独自の系統のH5N1が定着しており、2023年以降の人への感染例の多くは、この古い系統と世界的に広がる2.3.4.4bクレードとの遺伝子再集合(reassortment、異なるウイルス同士が遺伝子を交換して新しい型を生むこと)で生まれた2.3.2.1eというウイルスによるものだという。CIDRAPによると、この2.3.2.1eによる感染の致死率は40%にのぼる。
日本にとっての意味
日本の農林水産省は、海外で家きんの高病原性鳥インフルエンザが確認されると、発生地域からの生きた家きんや家きん肉などの輸入を一時停止している。米国については郡単位で指定する場合と州全域を対象にする場合があり、今回発生が相次いだミネソタ州スターンズ郡は2022年3月31日付、インディアナ州は州全域が2025年1月6日付で、いずれもすでに一時停止の対象に入っている。
また、北半球の渡り鳥は毎年秋に南へ移動し、米国中西部は北米の飛来ルートに、日本は東アジアの飛来ルートに位置する。ルートは異なるが、同じ秋の渡りの時期に野生鳥での検出が増えるという点は共通しており、日本国内の養鶏場での発生も例年10〜11月ごろから報告が増える傾向があるとされる。