旧館に触れずにまたぐ長さ55メートルの展示棟 フォスター事務所、スペインのビルバオ美術館を増築
英国の建築事務所フォスター・アンド・パートナーズと地元の建築家ルイス・マリア・ウリアルテ氏が、スペイン北部のビルバオ美術館を増築した。新しい展示棟は長さ55メートルの橋のような建物で、名前は「Agravitas(アグラビタス)」。大きなV字形の柱で持ち上げ、既存の美術館の上をまたいでいるが、元の建物には触れていない。
何が起きたのか
ビルバオ美術館は、いくつもの建物と増築部分がU字形に並び、そこから翼が1本延びる配置になっていた。増築は、それらのつながりをよくすることを目的に設計された。
展示棟は既存の建物と、複合施設の中央にあった屋外の空間の上に架かる。その下の1階は、ガラスの外壁で囲んだ彫刻のホールになった。上の階には柱のない展示室を設け、天窓は展示に合わせて日の光を入れることも、完全にふさぐこともできる。事務所と、街を見渡せる屋上テラスもつくった。張り出した屋根で日差しを遮り、屋上には太陽光パネルを載せた。既存の建物も修復し、1940年代の当初の入り口を数十年ぶりに開けた。
構造は、2023年に亡くなったスペインの技術者フリオ・マルティネス・カルソン氏が創業したMC2と共に設計した。
背景
展示棟には地元で生産された鋼材を使った。鉄鋼業で栄えたビルバオの産業の遺産をたたえるためだという。創業者のノーマン・フォスター氏は、産業の豊かな歴史を持ち、自らをつくり変える力に優れた街の伝統にならい、過去と現在と未来を橋渡しする計画だと語った。変わり続ける現代美術に応えつつ、敷地の歴史に敬意を払った建物で、展示室を広げ、街に開き、美術館に人が集う新しい中心をつくったとしている。
日本にとっての意味
古い建物に新しい建物をつなげるとき、日本ではまず法律が問題になる。いまの基準ができる前に建った建物は、そのままなら使い続けられるが、増築すると原則として建物全体に現行の基準が求められる。
建築基準法施行令137条の2は、構造について例外の道を定めている。増築部分が既存部分と「エキスパンションジョイントその他の相互に応力を伝えない構造方法のみで接する」場合、新しい部分は現行の構造基準に合わせればよく、古い部分には全体を現行基準に合わせることまでは求めない。ただし古い部分も、地震などで倒壊や崩落、外装材の脱落のおそれがないとする国土交通大臣の基準は満たさなければならない。
Agravitasは自前の柱で立ち、旧館に重さを預けない。日本の法律の言葉で言えば、力を伝え合わない増築である。切り離して建てることは、古い建物の姿を残す方法であると同時に、日本では古い建物に求められる改修の範囲を左右する選択にもなる。