気候・災害

中国、気候変動専用の第15次五カ年計画を発表 非CO2対策を強化

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中国政府が2026〜2030年を対象とする、気候変動対応に特化した第15次五カ年計画を発表した。生態環境部(MEE)が国家発展改革委員会(NDRC)や国家能源局など18の政府部門と連名で7月末に公表したもので、目立った新規目標は含まれていないものの、メタンなど二酸化炭素(CO2)以外の温室効果ガス対策や国際協力、カーボンマーケットといった主要分野で重要な方向性を示している点が特徴だ。

Industrial Bank系のシンクタンク、CIB Researchによれば、この計画は中国の気候ガバナンスや実施体制、行政能力を底上げする幅広い取り組みを示すものだという。専門家調査会社ClearBlue Marketsのアナリスト、Qin Yan氏は、「中国の気候ガバナンスがかつてない戦略的な水準に達したことを示している」と評価する。計画では、CO2排出だけでなく非CO2ガス、カーボンマーケット、カーボンフットプリント、気候変動への適応、国際協力までを網羅する包括的な目標体系が、五カ年計画のレベルで初めて作られたとMEEは説明している。

何が起きたのか

非CO2ガスへの言及が特に目を引く。気候変動シンクタンクiGDPが中国のUNFCCC(国連気候変動枠組み条約)向け報告書を分析したところ、中国は2021年時点で土地利用分を除き約140億トンの温室効果ガスを排出しており、そのうち非CO2ガスは約27億トン、全体の19%を占めていた。大半はメタンだったという。

今回の計画は、この非CO2ガスについて2030年までに排出削減能力3000万トン分(CO2換算)という既存目標を改めて掲げた。基準年は明示されていない。iGDPのプログラムディレクター、Chen Meian氏によると、この目標は換気ガス中のメタンや濃度8%未満の炭鉱メタンの利用プロジェクトだけでも2030年までに約2000万トンの削減が見込め、「比較的達成しやすい」水準だという。MEEが中国の自主的なカーボンクレジット(carbon credit)制度であるCCER(China Certified Emission Reduction)の新たな算定方法案について出した説明資料では、現状こうしたプロジェクトによる年間削減量は約450万トンと推計されている。残りは、産業部門から出る一酸化二窒素(N2O)やHFC(代替フロン)向けの対策で埋める方針だ。具体策としては、炭鉱メタンの利用プロジェクトのほか、HFCを燃焼などで無害化する末端処理技術、N2O削減のための触媒使用の指針が盛り込まれた。

さらに計画は、電力設備で使われる六フッ化硫黄(SF6、絶縁ガスとして使われるが強力な温室効果ガス)の回収・代替も求めている。Chen氏は、SF6対策への注目は「ようやく政策の焦点が当たった」ものであり、中国の電力システムが拡大を続ける中で「時宜にかなった、将来の排出増加を防ぐ動き」だと指摘する。このほか、炭素排出原単位(GDP当たりの排出量)を5年間で17%削減する目標や、カーボンマーケット対象産業での製品当たり排出原単位を3%削減する目標、化石燃料から再生可能エネルギーへの転換など、既存計画の目標を踏襲する項目も並ぶ。国際協力も計画が扱う分野の一つだが、公開情報の範囲では中国が国際的な気候協力でどのような役割を目指すかの詳細までは分からない。

背景

中国が気候変動対応そのものをテーマにした全国規模の多年度計画を出すのは異例だ。過去にはNDRCが2014年に2020年までを対象とする計画を出した例があるが、これは通常の五カ年計画の周期とは連動していなかった。中国は2030年までに排出をピークアウトさせ、2005年比でGDP当たり排出量を65%超削減するとパリ協定の下で公約している。さらに昨年、習近平国家主席自らが、2035年までに排出のピーク水準から7〜10%削減する新たな目標を表明した。今回の五カ年計画は、これらの国際公約を国内の実務レベルの政策に落とし込む「実施計画」としての位置づけが強く、目新しさよりも制度の整合性と実行力を重視した内容になっている。

日本にとっての意味

中国の非CO2ガス対策の強化は、日本の産業とも無縁ではない。HFCは冷媒として空調機器や冷蔵設備に広く使われており、日本国内でもフロン排出抑制法などで同種の規制が進む分野だ。中国側の規制強化は、両国の関連メーカーが手がける代替冷媒や回収技術の需要に影響しうる。また電力設備からのSF6回収・代替は、日本の重電メーカーも関わりうる技術領域であり、中国市場での需要動向は注視に値する。加えて、化石燃料から再生可能エネルギーへの転換が計画通り進めば、中国のLNGや石炭の輸入量が変化し、国際市場での価格を通じて日本のエネルギー調達コストに波及するという見方もできる。中国の気候政策は目標の派手さよりも実装の細部に踏み込む段階に入りつつあり、日本の企業や政策立案者にとっても、こうした制度の中身を追う価値は小さくない。