中国の石炭発電が反転増加、再エネの無駄が過去最多に
中国で2026年1〜6月、石炭火力による発電が増加に転じた一方、風力や太陽光の発電を意図的に抑える「出力制御(curtailment、発電できるのに使わずに捨てること)」が過去最多の水準に達した。エネルギー・クリーンエア研究センター(CREA)とグローバル・エナジー・モニター(GEM)がまとめた報告書によるもので、原因は送電網の能力不足に加え、石炭火力に有利な契約や価格の仕組みにあるという。
何が起きたのか
報告書によると、中国では2026年上半期に新たに30ギガワット(GW)分の石炭火力発電所が稼働を始めた一方、廃止されたのはわずか2.7GWにとどまった。すでに建設中か許可が下りている石炭火力は274GWに上り、これは中国の既存の石炭火力設備の約5分の1に相当する規模で、今後何年にもわたって拡大が続くことがほぼ確定しているという。この間、石炭火力が中国の発電量に占める割合は初めて5割を下回ったが、電力需要そのものが伸びたため、石炭による発電量は2025年の約1%減から一転して3.4%増加した。太陽光や風力による発電量は、この需要の伸びを賄うのに十分すぎるほど拡大していたが、実際には十分に使われず、出力制御の推定比率が前年同期比で約5割上昇した。報告書は、無駄になった電力量はインドネシアの年間発電量に相当すると推計している。
背景
こうした状況の背景には、2021年に高騰した石炭価格が引き金となって中国のおよそ20の省で発生した電力不足がある。工場の操業停止や停電が相次いだこの経験から、各地の地方政府は将来の電力不足に備える「保険」として石炭火力発電所の建設を相次いで認可した。今回の発電所増加は、この時期の認可ラッシュの結果が形になって表れたものだといえる。
さらに構造的な要因として、報告書は電力の契約制度を挙げている。中国では石炭火力の事業者に対し、前年の発電量のうち一定割合(現在は70%)を長期契約で販売することが義務づけられている。報告書を執筆したQi Qin氏によると、これは電力不足を恐れた規制当局が、石炭火力に安定した価格と稼働率を保証する目的で導入した仕組みだという。加えて中国は今年から、実際に発電した量ではなく、いつでも発電できる状態で待機していること自体に対価を支払う「容量報酬(capacity payment)」の仕組みも導入した。Qi氏は、これらの制度はそれぞれ単独では正当な目的を持つものの、組み合わさることで石炭火力を過剰に優遇する結果を生んでいると指摘する。同氏は「再生可能エネルギーが豊富にあるときでも、石炭火力の事業者には発電量を減らす動機がなく、その義務もない」と述べた。
石炭火力の固定化そのものも気候上の懸念だとしている。石炭火力発電所は一度建設されれば、その後何十年にもわたって稼働時間と収入を確保しようとする性質があり、それが老朽化した設備の退役や再生可能エネルギーの普及を妨げかねないという。中国政府は2026年4月に公表した文書で、石炭火力の設備容量だけでなく、発電量そのものについても初めて「合理的に管理する」よう求めており、直近の5カ年計画ではGDP1単位あたりの排出量を2026年から2030年にかけて17%削減する目標も掲げている。しかし報告書は、こうした国の方針と現場の実態には依然として開きがあると指摘し、出力制御や電力価格がゼロないしマイナスになる状態が続く省では、石炭向け契約の最低販売量を引き下げるか停止すること、新規の石炭火力の認可を止めること、送電網の拡張や省をまたぐ電力取引、蓄電設備の整備を優先することを提言している。
日本にとっての意味
再生可能エネルギーの拡大が排出削減に直結するとは限らないという今回の報告書の指摘は、日本の議論にも参考になる点がある。日本でも太陽光や風力の出力制御は各地で起きているとされ、その原因は送電網の容量不足だけで語られがちだが、中国の事例は、電力の売買契約や価格制度そのものが再生可能エネルギーを締め出す仕組みになりうることを示している。日本にも、発電所が実際に発電しなくても、いつでも供給できる体制を維持していることに対価を払う容量市場と呼ばれる仕組みがあるとされる。個々には妥当な制度の組み合わせが結果的に再生可能エネルギーを押しのけてしまうという指摘は、日本の電力市場を考えるうえでも他人事ではない。また、中国製の製品の製造過程で排出される温室効果ガスの量が今後どう推移するかは、中国から部材や製品を輸入する日本企業が自社の排出量を算定する際にも影響しうる論点である。